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タイのセブンイレブンの男の子について思ふ

先に写真の説明を。バンコクで洗顔を買いにホテル近くのショッピングモールへ行って見つけたサクラの絵の具。子供の頃は毎日絵を描くのが好きな子供だった私は、今でも絵の具が大好きです。^^

しかし、絵の具の話をしたいわけではない。セブンイレブンの男の子である。今回の旅行では、タイ国内で使うタイバーツは主人が用意した。私は現金を持っていないのです。でも、セブンイレブンでアイスコーヒーとお菓子を買いたくなった。あそこではクレジットカードと銀聯が使えたなと思い、一人でセブンへ行きました。

アイスコーヒーとお菓子を持ってレジへ進む。この時、セブンイレブン結構混んでた。私の番になりアイスコーヒーを頼み、彼らが作業へ入る前に

「これ、使えるよね?」

とカードを見せて念のため確認した。コーヒー作り出してから使えなかったら悪いじゃないですか。使えるというので安心して会計を済ませようとすると、会計の男の子が慌て出した。何か言っているのですけれど、よくわからない。どうやらカードを使うには最低消費額があるという話らしい。

そこで、私もちょっと機転が効かなかった。というのは、最低消費額といってもそこまで大した値段ではないと思ったから、適当にレジ周りのものをいくつか買えば収まると思ったんです。それで、男の子がこれでいいかと持ち上げたチョコバーを買う。タイの物価は日本より中国より安く、そのチョコバーは安かった。

「あ、ああ……」

おバカなタイ人とおバカな日本人で、レジ周りのチョコバーを20はあっただろうか?全てPOSし終えた。そこそこに混んでいるコンビニのレジで、ありゃあと思いながら、チョコバーを持ち上げピッと鳴らしては、ああとうめいて動揺する男の子の様子を鑑賞しておりました。まだ足りなーいってやつね。

これが、タイ人男性か!

二つあるレジの片方はおバカなタイ人とおバカな日本人中年女性で塞いでしまいましたが、もう一つのレジでクマとウサギだったらどちらかといえばクマに似ているタイ人男性が会計をこなしていたので大きな問題にはならず、我々はまだその珍会計を続けていた。

とうとうチョコバーがなくなってしまったので、もうちょっと高いものをレジ周りでと思い、クリネックスのウェットティッシュを差し出す。

「次はこれだ」
「ああ」

どっちかといえばウェットティッシュはいくつあっても困らないので、それにチョコバーよりは単価が高いだろうし、最初っからウェットティッシュにしとけばよかったなと反省。そして、ぴっ

「ああ〜!」

それでも、終わらない会計!動揺し続ける男の子。そして、私はまた
これがタイ人男性か〜〜!!
と衝撃を受け続けていた。

それでもその地獄の会計はとうとう終わりを見せ、私の銀聯カードはタイのセブンで使えた。別に必要のなかった大量のチョコバーとティッシュと息子と食べようと買ったお菓子とアイスコーヒーを抱えてホテルの部屋へと戻りながら、こういっていいなら悶々としておりました。

いや、やっぱりやめておこう。この言葉、悶々、撤収!で、淡々と考えていたわけだ。

タイ人男性って……

日本人男性とも中国人男性とも違う。まだ多分20になったかならないかの若い男の子で、顔が特別に綺麗とかいうわけでもなく、普通の、フツーの子でした。ただ、チョコバーをピッとするたびに会計が終わらなくて動揺する様子が、あの恐縮と動揺が入れ混じったあの表情が、まぁ、可愛かったのですよ。

結婚して子持ちになると、別に自分の男の趣味を更新し続ける必要もなくなるわけですが、私は家康は年取っても妾をいっぱい作ってたなと頭の片隅で思いながら、きっと長生きするには男の趣味は更新しといたほうがいいだろうと思い、別にそれを行使するチャンスも何もあったものじゃないが、男の趣味は更新しているのです。ここで断言するが、わしゃ、年下には興味はない。弟かあるいは子供として温かい姉や母として見守り保育の気分になるだけだ。

なるだけのはずだったのに、その鉄の女のハートに、割と迫ったぞ、タイ人男性!(つまりは結構可愛いなと思ってしまった)

息子が待っているホテルの部屋へと続く優雅な屋外の回り廊下の一角で、突然立ち止まり、動揺を鎮める。(時間差で襲ってきた動揺)

タイ人男性、恐るべし。女が上で、男が下というシチュエーションの中で威力を発揮するという点においては、日本人<中国人<タイ人、タイ人男性、強いっす。私のような年下男に対しては堅物な人間であっても、くらっときそうになったぞ。しかも、顔は普通の男の子に。

それからですよ、ここが自分がアマチュアとはいえ小説を書いている人の特性ですが、もしもこうだったら劇場を思い浮かべる。つまりは、本来なら自分は結婚などせずに中国を皮切りに日本語教師としてアジアを転々としながら生きていこうと思ってたわけ。ちょっと間違ったら、そこそこ歳をとった自分があんな感じの可愛らしい男の子にコロッといった人生もあったやもしれぬ。

それでよ、そこですったもんだして、ああだこうだなった模様を私小説にでもして、それがデビューになったかもしれないな。(現実的な困難なあれやこれやは割愛)

つうか、わしゃ、結婚運強い(=あげまんだ)人だから、まさかの可愛い燕が飛び立つタイ人バージョン?いや、嫌だなぁ。燕は燕だから可愛いのだもの。飛び立つな、そこ。じゃ、今度こそ、俺(←私)が稼ぐか。

そして、可愛い燕は燕のままに主夫になるのですよ。
いいじゃん、いいじゃん!ワクワクしてきたところで、ホテルの部屋に着く。

「どうしたの?これ」
「いろいろあって」

大量のチョコバーを見て、目を丸くする息子にかくかくしかじかと訳を説明する。旅先だというのにホテルの部屋でゲームをしないと生きていけない息子が、ベッドに寝っ転がりながらチョコバーを齧るケツを叩き、座らせる。座らせながら妄想の続きをゴーだ。

いやぁ、そんな人生もええのではないか?女ががっつり稼ぎ、可愛い燕がしっかり者の主夫となり、可愛い子供がいて、みんなハッピー。そんな国際家庭があってもいいではないか。

しかしだな、多分、私には無理なのだ。堅物だからか?違う。わしゃ、仕事運、弱いだに。そんなことになっても、がっつり稼げる星の元には生まれてないよ。せっかくもった可愛い燕と子供達には何不自由ない生活をさせてやりたいだに。ごめん、お母さんの稼ぎじゃ……

「お母さん、どうしたの?」
「ん?」

すっかり妄想の中の夫と子供達に、ガチで謝罪をしていましたが、そんな家族いないんだった。やれやれ。

「これ、どうするの?こんなにたくさん」
「そうだねぇ」

結局チョコバーは、あれだ。オフィスに持って行きました。野郎ども、食いやがれ!と思ってオフィスの共有冷蔵庫と給湯スペースのテーブルに放り出しておいたら、その日のうちに捌けた。頭脳が疲れてくると、人間はチョコを食べたがるものだに。

私は上司のアシスタントみたいなもので、その私と組んで仕事をすることの多い、アシスタントのアシスタント、言うならば孫アシスタントみたいな子がいる。(つまりは俺(←私)が早くアシスタント卒業しろって話ですが、やれやれ)この子が夕刻、おそらく2個目のチョコバーを食べていた。それは最後の一個だった。

おいおい、君、この前太っちゃったからダイエットって言っていませんでしたっけ?と思いながらも、PC画面の前ではむはむしている様子に、非常に癒された。リスのようだった。彼女に手を振って帰る。

「バイバーイ」
「バイバイ」

なくなってしまったではないか。チョコバー!って話ですが、ご安心を。記念にまだ一個あるのです。写真を撮って思い出にしようと思って。

なんの思い出だよって、そうだなぁ、祝、年下向け淡い初恋記念?

言いながら、自分の背中がひやーっと冷たくなりました。あかん、息子育てながら、燕を飼うことはできん。残念ながら、私もヤキが回りました。あかんあかん。(背筋を伸ばす)

それにしてもですよ。たまに、日本人女性の中で外国人年下男性にくらっときて結婚される方もいますが、しみじみその気持ちがわかったぜ。稼げる女性にはそんな道もあるってことだ。

というか、一応うちの主人もね、二つですが、年下なんです。私もある意味、その道にハマった人なのかもしれませんが……。しかし、ここにもう一つ落とし穴がある。主人が童顔なんですよ。実際は二つ下なだけですが、もっと下に見られることがあり、お知り合いになる皆さんに

あ、この人たちそういうことなんだ

としみじみ思われることがある。しみじみ。

「そんな若くありませんから、二つ下なだけですから」
「ん?」

一回り以上下の男とくっついたと思われるのが不名誉なため、その誤解を叩き壊しながら回っている。

2024.05.18
お笑い芸人著

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