こんなAIいたらいいなの件
会社についてやれやれとカバンから充電器を取り出そうとした。あいぽんとあいぱとイヤホンを充電するためである。
「ん?」
まんまと忘れてきた。充電が必要なのは電子機器の方ではなくて、私かもしれない。ちょっと話は変わるが、先々月、長く大切に使ってきた相棒とお別れしました。あいぽんです。デジタル時代の片隅でアナログに生きるシーラカンスのような人間でございます。本当はものは長く大事にしたい。しかし、いかんせん電子機器は寿命が短い。生物によって寿命が違うのと同等に、電子機器は人間ほど長く生きられない。
アーメン!
で、泣く泣く相棒を手放し、新しい相棒と生活している。あいぽんである。あちきの初代あいぽんから言ったら、もうひ孫どころではなく夜叉孫ぐらいか?
もしも以前の相棒を携え、朝会社について充電器を忘れていたら、
ぎょえー
となる。充電が帰りまで持たないからである。この瞬間からBGMは007に代わり、家の最寄駅の改札を無事抜けるまで、
テンテレレ、テーテテテ、テンテレレ、テーテテテ、テレーテレレレレレ
がエンドレスで頭の中で響き渡り、心臓はドキドキしていただろう。この未来都市深圳で携帯のバッテリーが切れるということは、全ての決済が滞り、地下鉄にも乗れないということである。
アラエッサッサー
歩いて帰りましょうか?(1時間以上かかる)
しかし、今のあいぽんはぴちぴちの新製品である。朝40%台でも問題ねだろ。さようなら007、こんにちは、何にしようか?BGM
そんなこんなでお昼である。ラリホーと一階へ降りる。前の相棒には悪いが、今日ばかりはあいぽんを新しくして良かったなと思ったぜ。007のテーマは心臓に悪いからな。
飯を食い(飯も充電がなければ食えない)、流石にいつもやってるスマホのパズルゲームは諦め、飯を食い終わり外へ出る。セブンイレブンでコーヒー用の牛乳と冷たいペットボトルの緑茶を買ってお金を払い(コンビニも充電がなければ寄れない)、
『付款成功』
のアナウンスを聞きながら、その自動決済の機器に背中をむけ外へ出る。その瞬間に、閃いた!また、どうでもいいことが!
あったらいいなAIロボ、妄想劇場立ち上がる!
「チョットマテ、オマエ」
「なんだ、なんだ?」
いきなり骨骨アームなAIロボ2人に出口で捕まる、未来の俺(私)。
「カネ、ハラッテネダロ、ボケ」
「え?払ったって」
「スマホ、ダシテミロ」
「ん?あ……」
「チャントハラエ、ボケ」
自動決済って、払わずスルーできるのかやってみたことないけど、人間で常に監視するの難しいじゃないですか。ここもAI、いんじゃね?それにしてもさすが私の考えたAIロボ、口が悪いな。
瞬時に脳内トレースして、相手の母語を見極め、日本語だったり英語だったり中国語だったりで呼びかける。
「そこまで予算かける必要ないでしょ?」
脳内の上司が却下する。そうか、じゃあ、中国では中国語で、日本では日本語で、導入決定!(してません)
本当に1円にもならない妄想をしながらエレベーターに乗る。いつかどこかで私の物語の片隅に出てくるかもしれないAIロボをキャラとしてインプットした。
テラリラリ(ドラクエ的なゲーム音、再び)
AIロボシリーズ、続けようか。それでネタが集まったら、SF近未来、宅配ロボはいく(仮題)を書こう。そこで、あったらいいなAIロボについて続きを考える。すると、残念な中年である私はすぐにいかがわしい方に脳が走った。
結婚したくない大人の方たちに配布するロボである。
チーン
つまり、ロボが旦那であったり奥様であったりするわけだ。
い、いかがわしい!
自分の品性が下劣であることにショックを受けている本体(→脳内の人格)の横で、勝手にまた企画の小人たちが出てくる。
「いっつも同じだと飽きるでしょ」
「なにが?」
「受け答えとか、あの時の方法とか」
「ああ」
「定期アップデートが必要でしょ」
「ああ」
「それ、誰がやるの?」
「そりゃ、販売元の人だよ」
「ああ、なるほど」
チーン
「そんな、難しいことなかなかできないんじゃない?」
「技の方はどうするか、だね。ただ、言葉のやり取りならある程度あの人ができるでしょ」
小人たちが 自分の品性が下劣であることにショックを受けている本体人格を指差す。
「超プライベートシーンで、言ってもらいたい言葉とか」
「盛り上がる言葉とか」
「未来はそういう部分で、小説家が活用されるんだね」
チーン
ここで本体、反論する。
「そんなん古今東西の恋愛小説と官能小説をAIに学習させて、シャッフルで適当に定期アップデートしていけばいいんだよっ」
「ああ、なるほどなるほど」
本体の拒否りに小人たち納得。こいつら儲かればなんでもいいんだ。
「じゃあ、技の方もそういうことで」
「でも、適当にアップデートして安全性に問題が出たらどうする?」
世の中には結構危ないプレイもある。
「そこ、課題点だね」
「そうだね。とりあえずそこは保留して」
なんだろう?この経営会議。
ま、でも、着々といかがわしい商売の企画会議を小人が進める横で本体は別のことを考えていた。
そんなふうにしてまずハードである体を作り、命であるソフトウェアを起動させたら、その子たちはもう可愛い子供達なのである。出荷した後に、携わることが携わることだけに、嫌な目とか危険な目にカスタマーの方ではなくAIロボである私の子供たちがあわないとどうして言えようか。
そんなんあかんやろ!
江戸時代の鼠小僧が金持ちから金を奪っては貧乏人にばら撒いていたエピソードが好きで、そして、大岡越前や水戸黄門を愛してやまなかった、とっても渋い小学生でしたっ!わしゃ、正義の味方やねん。
「もう一個、AIロボ、思いついた」
「ん?」
名付けて、必殺仕事人ロボ。近未来仕様でも、江戸を感じさせるフォルムとネーミングを使うのだ。
「あちきの配布したロボを粗末に扱った輩は闇で葬る、暗殺ロボだっ!」
「なに言ってんだよ!」
私から生まれた小人のはずなのに、こいつら、逆らいやがる。
「そんなん、自己都合で故障したロボは無償で交換しなければいいんだよっ」
「取説にない使用方法で使用したら、無償交換なし」
「保証一年間」
非難轟々である。
ちなみにその取説、18禁ですね。
「購買層に謎の死が広まったら、売れ行きに問題出るわ」
「そうだそうだ!」
「お前らは儲かればなんでもいいのかよっ」
「地獄の沙汰も金次第ー」
議論は平行線である。
「ちなみに取説にない使用方法をしたかどうかはどうやって確認するんだよ」
ちょっと気になって聞いてみた。
「うーん」
企画の小人がみんなで腕を組み考える。
「カメラをつける」
「ドライビングレコーダーみたいなな」
チーン
「それ、めっちゃ、個人情報違反というかなんというか……」
そこに写っているのはウルトラスーパー個人的な映像ではないですかね?
「だから、別に強制で見せろとは言わない」
「うん」
「無償交換を望むならその条件はレコーダーを見せることである」
チーン
「そんなんで、見せてくるアホ、いるか?」
「ワシらの勝利だ。リコールゼロだ」
キヒヒヒヒと企画の小人が笑っている。こいつらは本当に性格の悪い小鬼のような奴らなんだ。
「その企画、ボツ!」
「ああああああーーーー」
こうやって今日も1銭にもならないことを考えている。
SFファンタジー、宅配ロボは行く(仮題)が完成する日は遠い。
汪海妹
2024.08.05
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?