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人口増加率6年連続全国1位のまち 流山

今回の旅も、仕事ついでの空き時間を使った旅で、目的地は流山です。私は25年ぐらいは首都圏に住んでいて、それなり引っ越しの回数を重ねていろいろな街に住んできましたが、流山市は住んだことはもちろんのこと、行ったことすら(たぶん)ない街でした。
そして、一般的な観光客が来るような場所もなく、なにもなければ今後も行くことはなさそうであった街に行ってみました。

Twitter小説

Twitter(当時:現X)小説というのが、2022年秋ごろ、はやりました。またの名をタワマン文学とも言います。Twitterを使って、ツリー形式で小説を書かれたもので、いくつかありますが、有名どころで言うと、麻布競馬場窓際三等兵というアカウント名で書かれているものです。この両者に限らず、Twitter小説の多くは、都会の暮らしの鬱屈とした情景や、中学校受験や、タワーマンションといった、都会にしかないヒエラルキーな競争社会を描きつつも、退廃するつまらない地方とも対比させるのが基本です。そして皮肉たっぷりにひねくれた感情が支配する文章体です。と説明するより実際の文章を紹介したほうが手っ取り早いと思うので、ふたつほど、書籍化された本を紹介します。

「『30までお互い独身だったら結婚しよw』。三田のさくら水産での何てことのない飲み会で彼が言ったその言葉は、勢いで入れたタトゥーみたいに、恥ずかしいことに今でも私の心にへばりついています。今日は、彼と、彼の奥さんと、二人の3歳の娘の新居である流山おおたかの森に向かっています。」(「30まで独身だったら結婚しよ」より)

この部屋から東京タワーは永遠に見えない 単行本 – 2022/9/5 麻布競馬場 (著)

タワマンには3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ――。
大手銀行の一般職として働く平田さやかは、念願のタワマンに住みながらも日々ストレスが絶えない。一人息子である充の過酷な受験戦争、同じマンションの最上階に住む医者一族の高杉家、そして総合職としてエリートコースを歩む同僚やPTAの雑務。種々のストレスから逃れたいと思ったとき、向かったのは親友・マミの元だった。かつては港区で一緒に遊び回り、夢を語り合った二人だったが――。

息が詰まるようなこの場所で 外山 薫 (著)

この2冊は私も読んでいて、一応、地方から東京に出てきて慶応大学を卒業した身としては、身近過ぎる内容で、ある意味懐かしく、そして社会への皮肉っぷり痛快なところもあり、一気読みをしてしまいました。
ここで登場するのが、ひとつ目の引用にもある街である、流山おおたかの森です。ちょっとバカにしすぎな感もありますが、キラキラとした東京の生活を捨て、郊外の新しい街で子育てなど生活感丸出しの生活をするところとして描かれ、いわば都落ちした人たちが集まる土地として、出てきます。

流山の発展に関する書籍

これら書籍化されたTwitter文学を読了後、これまで全く興味が湧かなかった流山について少し知りたくなり、流山の発展に関する書籍を探していたところ見つけた新書が、「流山がすごい(新潮新書) 大西康之(著)」です。
著書の大西さんという方は、日経の記者で、流山に在住されています。そして、流山の、とくに流山おおたかの森駅を中心とするエリアの市街地の発展について、ジャーナリスト的な視点を持って書かれています。
少しネタバレにはなりますが、
・ つくばエクスプレスの開通
・ 東神開発(髙島屋系列のディベロッパー)による駅前開発
・ アメリカで都市開発を学んだ市長
・ 子育て世帯に必要な保育園の整備
などを通じて、街が発展していった経過が書かれています。この本を読み進めていくと、いよいよ流山に興味が湧いてきました。

流山がすごい(新潮新書) 大西康之(著)

流山おおたかの森をめざして

本を読んだのは、2022年の秋ごろだったと思うのですが、いかんせん、流山に用事もなく、なかなか行く機会もなかったのですが、半日ほど時間が取れたので、わざわざ行ってみることにしました。
まずは名古屋から、いつも東京に行く時と同様に、東海道新幹線で品川まで出ます。仕事自体は午後からであるため、そう朝早くから行く必要もないにもかかわらず、名古屋駅8:12発の、のぞみ296号で行きました。
名古屋駅から流山おおたかの森駅は、ふつうに路線検索をすると、つくばエクスプレスを使うルートがトップに表示されると思いますが、今回は新幹線を品川で下車し、そこから常磐線にはいる在来特急ときわ57号でいったん柏へ向かいます。東京の湾岸エリアである品川から千葉の北のほうの柏だと、私の中では時間がかかりそうなイメージもありましたが、品川駅発10:14、柏駅着10:50とわずか36分でした。品川から常磐線に入るルートである、上野東京ラインは2015年春に新設された路線で比較的新しく、私の中の情報がアップデートされていなかったのですが、近いんですね。
なお、上野東京ラインは、かつては線路があったものの、東北・上越新幹線の上野~東京間の開業に伴い無くなり、それが再び上野東京ラインの愛称をもって復活したものとなります。
それほど長時間の乗車時間ではありませんが、待ち時間に品川駅構内のエキュートをうろうろしていると、すこし食べたくなり、焼き鳥とビールを買って、特急ときわに乗ることにしました。

品川駅構内で買ったサッポロ黒ラベルと焼き鳥

弥生軒

柏から流山おおたかの森へは、東武アーバンパークライン(東武野田線)に乗れば2駅、なのですが、柏からさらにもう1駅各停に乗って、我孫子駅にいきました。行った理由は、鉄道系もしくは旅系YouTuberや鉄道ファンがネタにしている駅ホームの立ち食いソバ屋へ行きたかったから。

弥生軒5号店

我孫子駅ホームは3本あるのですが、そのうちホーム2本に3軒の弥生軒という立ち食いソバ屋があります。そしてここの名物メニューはから揚げそば・うどんです。どんぶりを覆いつくすようなサイズのから揚げがそば、もしくはうどんに1つか2つ乗っているもので、このから揚げは1日平均1300~1500個も出るということで、また鉄道ファンの間ではげんこつそばとの別称で呼ばれていたりもします。
今回は、ふつうに、温かい、から揚げ(1個)そばを頂きます。

どんぶりを覆いつくすから揚げが乗ったそば


また弥生軒は、東北新幹線開業前は、常磐線に多くの長距離列車があったこともあり、駅弁を販売していた業者でもあります。画伯 山下清がこの弥生軒で働いていた縁で、駅弁の掛紙用に絵が山下清作だったこともあるそうです。

メニュー 山下画伯についての説明書きも

ふたたび、流山おおたかの森をめざして

さて、少し寄り道をしてしまいましたが、柏駅に戻り、東武アーバンパークラインに乗り換え、流山おおたかの森駅へ再びめざします。
車窓と言えば、東葛地域の一般的な田畑や住宅街であり、平日であったこともあり、乗客も地元民という、首都郊外の電車の風景です。
流山おおたかの森駅は、2005年のつくばエクスプレス開業に伴って開業した駅です。もともと、東武野田線はこの土地を走っていましたが、駅はなく、つくばエクスプレス開業にあわせて東武の駅も作られたという経緯があります。そのため、2005年以前は駅前の施設はなにもなく、市街地としての歴史はまだ20年もない新しく開発された地区です。なので、駅前に飲み屋などもなく、ゼロから開発できたとか。

東武鉄道の流山おおたかの森駅改札
つくばエクスプレスの流山おおたかの森駅
東武アーバンパークラインの線路 古くからあるため高架ではない

おおたかの森S・C

流山おおたかの森駅前の中心的な施設は、おおたかの森S・Cです。S・Cと言えば、玉川髙島屋S・Cをもしかすると思い浮かぶかもしれませんが、そのとおりで、デパートの髙島屋系列のディベロッパーである、東神開発が運営しています。

おおたかの森S・C
おおたかの森S・Cの前の広場のオオタカ像

とくにすごいテナントが入っているわけでもないのですが、デパート系なだけあって、どことなくおしゃれです。公共性のある事業なので、入札?コンペ?で駅前開発事業者の選定は行われたようですが、都市計画の専門家である市長も、特徴ある商業施設とすべくぜひ髙島屋さんに、ということだったようです。

駅前商業施設 テナントはふつうだが、
駅前商業施設のテナントのバレエ教室 おしゃれ、かつ子育て世帯対象

流山おおたかの森駅から一駅つくば方面へ行くと、柏市になり、柏の葉キャンパス駅があり、この駅にはららぽーと柏の葉があり、こちらは三井不動産が手掛ける商業施設のららぽーとがあり、おもいきり競合しています。これは前述の本「流山がすごい」のネタバレになってしまいますが、入っている映画館TOHOシネマズのスクリーンの枚数が、ららぽーとに入居している映画館MOVIX柏の葉より1枚多いというように競り合った状況になっています。

駅前ロータリー

多くの駅の駅前は、だいたいロータリーになっています。駅を利用する乗客が、最終目的地に向かう、もしくは出発地から、車やタクシー、バスなどを使うことから、駅前をその接点とすべく、ロータリーとなるのが普通です。
しかし駅には4つある口の2つのみにロータリーがあり、もうひとつは建物と直結、残りひとつは、おおたかの森S・Cのある口で、ここは車両が入れないつくりになっており、車通りがなく小さな子供にも安心な設計です。

駅前ロータリー
駅前ロータリーは4つの口のうち2か所に
おおたかの森S・Cのある駅前は車両が入れない広場

「母になるなら、流山市。」

流山市のキャッチコピーに「母になるなら、流山市。」というのがあります。その通り、子育てにやさしい市ですよ、ということで、流山市に限らず子育て政策は国も地方自治体もやっている昨今ですが、流山市の特徴的なもののひとつに、流山おおたか駅前に、保育園送迎ステーションがあるということです。これは、社会福祉法人 高砂福祉会が運営している、駅前の一時的な保育施設から市内の保育園に保育園バスを運行しているというものです。高砂福祉会は社会福祉法人には珍しく大規模な組織で、本部のある流山のみならず、北海道や東京でも事業展開がされています。そして流山では自身が運営する保育園のみならず、他の保育園に送り届けるという事業を行っているのです。
保育園に行く子供の親は、駅前の保育ステーションに預け、その足で電車に乗って会社などへ働きに出て、子供たちはその間、それぞれの保育園に行き、また夕方には保育ステーションに保育園バスで戻ってきて、仕事帰りの親と自宅に帰るという使い方です。兄弟がいる場合、別々の保育園でも、このサービスを使えば、一度の送り迎えで済みます。
また駅前にはマンションが多いです。一戸建ても少なくありませんが、マンションもワンルームのものよりも、ファミリー世帯用の70平米以上ぐらいの物件が多いということです。

マンションは多い 写真中央の白い建物内に保育ステーション

スターツおおたかの森ホール

駅直結で、コンサート・ホールもあります。スターツの名が付いていますが、これはネーミングライツがスターツが選定されている流山市の施設です。クラシック音楽のコンサートなどを行えるホールです。そしてこのコンサートホールの建屋には、市の行政出張窓口や、市の観光案内をするところも併設されている施設です。
ちなみに、市の中心を市役所の所在地、もしくは市の名前を冠した駅のあるエリアとすると、流山の場合、この流山おおたかの森のエリアからは少し離れているエリアになります。そして、流山駅は流山鉄道、通称りゅうてつの終着駅であり、首都圏ローカル鉄道という点や、みりん製造などで成り立っていた旧市街の中心という点で、どんなところか少し気になります。

スターツおおたかの森ホール
市の観光案内 スターツおおたかの森ホールの建屋内

スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯

これまでの駅前開発事業ではないと思われますが、駅から徒歩5分ぐらいのところに、スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯があります。竜泉寺の湯は、名古屋市守山区にあって、私も自宅から近いので、何度か行ったことがありますが、かなり大型のスーパー銭湯で、昨今流行りのサウナにもしっかり設備投資しており、いつ行っても混んでいます。むしろ混みすぎて、少し敬遠しているぐらいです。
その竜泉寺の湯が運営する流山のスーパー銭湯が、スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯なのですが、サウナシュラン第1位、とか、関東最大級のスパ&サウナ施設、とかのふれこみで気になっているところだったので、最後に寄ってみました。

スパメッツァおおたか 竜泉寺の湯

名古屋市の竜泉寺の湯は、駅から近くもないただの郊外で、だだっ広い青空駐車場ですが、さすがに流山おおたかの森では、立体駐車場となっていましたが、でかい駐車場です。
サウナも、オートロウリュウ、頭まで入れる水深の深い水風呂、塩サウナ、ととのう用のチェアなど、設備は充実しており、長時間楽しめる感じでした。

さいごに

流山おおたかの森駅前を歩いて回って、高齢化が進み、または人口減少が進む日本のなかで、逆に人口増加が著しいという理由が垣間見れました。
ただ、わざわざいったところで、私のように本を読んでから、など、知識をつけていかないと、ふつうの2路線交わる乗り換え駅に、駅前のショッピングセンターがある新しい住宅街のまち、としか見ることができず、街を歩く面白さを体験することはなかなか難しそうではありました。
ただこのように、事前に街の発展の歴史や、都市開発の経緯を下調べしていく旅もいいなと思える旅行でした。なお、Twitter小説の舞台かもしれませんが、聖地巡礼的な要素は一切望めません。

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