北欧⑤ フィヨルドの渦潮 ボード

ボードの渦潮
以前、四国の鳴門海峡の渦潮を、見に行ったことがあった。
その渦潮に圧倒された。
船に乗り、渦潮に近づいていくと、エンルギーが下腹にドドーンと飛び込んできた。
ゴーゴーと物凄い音とともに、全身にエネルギーが伝わり鳥肌がたった。
体中がギンギンとし、しばらくその感動でからだは震えていた。
そしてその活力に、からだもこころも酔った。
その経験を思い出し、ノルウェーでも再度その経験を期待して、ボードーに行った。
ボードーは、バイキングのふるさとであるノルウェーの西海岸にある。
独特の細長い入り江であるフィヨルドが連なり、
その北部には、北極圏内のサルトストラウメン海峡があった。
そこに世界で最も速いうず潮が、発生する。
潮の速さは、時には時速50キロ近くにもなり、鳴門のうず潮(時速20km)よりずっと速い。

カラショークからボードーまで、飛行機を利用した。
早朝だったので、朝一番のバスに乗り空港まで行った。
飛行機の中でコーヒーを頼んだ。
もちろん有料で500円だった。
最初にお湯が入った紙コップを渡された。意味がわからなかった。
次に、インスタントコーヒーのネスカフェの棒状になったコーヒー粉入り1本を渡された。
わたしはコーヒーは好きだったが、インスタントコーヒーは飲まなかった。
両手に湯入り紙コップと、コーヒー粉入りステックを持ち呆然とした。
「処変われば品変わる。」は当然と認識していたが、このコーヒーが500円とは、認識が甘かった。

ボードーでのホテルは、ユースホステルだった。
このユースホステルは、鉄道の駅の上階にあった。
鉄道利用であれば便利だろうが、わたしたちは次も飛行機に乗ってオスロへ行く予定だった。
鉄道は列車の本数も少なく、時間も大変かかった。
北欧は格安飛行機が多く、飛行機利用が逆に安あがりだった。

渦潮見物は、大潮の時刻を案内所で聞き、それにあわせて行った。
港近くのバス乗り場まで行き、ローカル線のバスに乗った。
リアス式海岸沿いを走った。
小さな町や村を過ぎた。

フィヨルドの海岸線は静かだった。
そのままの自然が何のてらいもなく、ただそこにあった。

渦潮を見るバス停に降りた。
観光客が大勢乗っていたので、それにあわせて降りた。
そこには、なんの標識も看板もなかった。
観光客は右へ行く人たちと、前方の橋に向かっていく人たちに分かれた。
日本なら大きな案内板や説明書などがあり、すぐに観光地とわかる。
しかし、どこを見ても何の標識もなかった。
普通の大きな道路にバス停があったのみだ。
観光客がいなかったら、乗り越してしまったであろう。

わたしは、右側が半島になっていたので、そこから船がでるのだろうと推測した。
右に行きたかったが、友人一人が、橋の方にどんどん歩いて行ったのでそれに従った。
大きな橋だった。
橋には多くの車が、停車していた。
そして人が、下を覗き込んでいた。
橋の中央まで行って下を見ると、海水が逆流していた。

上流から流れ出ようとする水と、海からの水がぶつかり、そこに渦潮ができていた。
いくつもの渦潮が水とぶつかり合いながら、上流へ上流へと流れていった。
大蛇がうねりながら川水に逆らって、昇っていくようだった。
消えては又下から、飽きもせずに昇っていくような感じだった。
その渦潮の大きさはそれぞれが違っていた。
大きな川に、いくつもの渦があった。

その速度は世界一と言われている。
だが、渦潮の大きさと迫力は、比べようもなかった。
鳴門は直径30メートルであり、ここは10メートルで三分の一だった。
そして橋もかなり高かった。
水が激しくぶつかり合う音も、聞こえなかった。
ただ川岸は緑があふれ、花も咲いていた。
そこの遊歩道をゆったり散歩しているカップルもいた。
それは美しい映像を見ているようであったが、
期待したエネルギーの力の体感はなかった。

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