南欧9 マルセイユ市内の散策で機関銃の兵士

アルルでの素敵な時を過ごし、新幹線でこの旅の最後の地であるマルセイユに向かった。
もうこの頃になるとホテル探しも堂に入ったもので、カンも働くようになり、
迷うことなく見つけることができた。
グループ旅行のときは、日本からネットで手頃なホテルに予約を入れておくのが通例となっていた。

マルセイユは、海と丘に挟まれたフランス最大の湾港都市だ。。
フランス最古のこの都市は 、小アジアから来た古代ギリシアの一民族であるポカイア人が紀元前600年頃に築いた植民市マッサリア(マッシリア)にその端を発する。
このためフランスにおいてマルセイユは (ポカイア人の街)とも綽名されている。
旅行カバンをホテルに残し、早々に町の探索に出かけた。
ホテルを出ると、すぐに港が広がっていた。
それを囲んでレストランが並んでいた。
ランチはもちろん 名物料理のブイヤベースだ。
海の見える、外のテラス席に座った。
目の前や、通りを観光客が右往左往していた。
ウェイトレスが忙しいそうで、中々来てくれなかった。
何度目かで、ようやく来てくれた。
わたしたちは、その日まで一人一皿でなく、何品かをシェアして頼んでいた。
だが、「ここでは一人一品が決まりだ」と不機嫌そうに言われた。
わたしは体調を崩していて、食べたくなかった。
飲み物だけでもダメと言われ、しょうがなくサラダも頼んだ。
このレストランの印象は良くなかった。
最後まで、ウェイトレスは不機嫌だった。
そして、この町も又、全体の印象が悪かった。
雑多の中での、黒人種が目立った。
黒人が悪いと言うわけではないが、アフリカに近いせいか、貧しい黒人が多いようだった。
観光客のリッチさと、貧しさのなかで喘いでいるであろうその落差が大きく、
平安な穏やかな気持ちには、なれなかった。
アットホーム的な、暖かいアルルから来たせいもあっただろう。
料理も観光客用で、中身がなかった。
同行者が楽しみにして頼んだブイヤベースも、美味しいとは言えなかったようだ。

食後は町の散策と言っても、都市なので近くにあった観光ミニバスに乗った。
観光ミニバスに乗ると、観光名所を効率よく巡ってくれるので便利だった。
丘の上にはローマ・ビザンチン様式の聖堂があった。
それはマルセイユのシンボルになっていた。



鐘楼の上にある黄金のマリア像が、航海に出る船乗りたちを見守ってきた。
そのテラスからは360度の大パノラマが楽しめ、マルセイユの湾港を見下ろせた。
港にはあらゆる船が、停まっていた。
地中海の覇者とも言えるこの港には、豪華客船も停泊するし、大小様々なヨットやクルーザー。
漁港には海の男たちの漁船が、所狭しと停泊していた。
だが、自然の調和はなかった。
沖合い15分のところにある巌窟王の舞台として知られるイフ城が、荒々しい姿をみせていた。



このイフ城は要塞として建造され、17世紀からは監獄として利用されていたものだ。
古くてがっちりしっているその風貌は、嵐を想像させた。

1日、街中を見ると、見るところがなくなっていた。
2泊の予定だったので、明日の丸一日が残った。
マルセイユからローカル線で30~40分のところに、エクス・アン・プロバンスがあった。
この町はセザンヌ由緒の地であり、学術・芸術都市でもあった。
時間があったら、行きたいと思っていた町だった。
皆に話すとマルセイユより、そちらに行きたいと言った。
ただ、わたしは風邪を引き、熱が出始めていた。
わたし抜きで、言って欲しいと伝えた。
すると、みなは絶句した。
自分たちだけでは、行けないと思っていたからだ。
だが、同行者の中にはわたしより英語力がある人もいた。
ただ、使わないだけだ。
できないと思い込んでいるだけだった。
案内所で私と一緒にいて、わたしの聞き取れない英語をしっかりとわかっていた。
「大丈夫だから」と何度も言うと、ようやく皆は自分たちだけで行く決心をした。
翌朝、みんなは不安な面持ちで出かけていった。
一人になったわたしは、のんびりとホテルで寝ていた。
お腹が空いたので、ランチに出かけた。
港とは反対の方に行くと、兵士が武装して立っていた。
腕には、機関銃を下げていた。
初めての海外旅行は、フィリッピンだった。
40年近く前のことで、会社の社内旅行がセブ島だったのだ。
空港に降り立つと、空港内には何人もの兵士が銃を下げているのを見て、驚いた。
その時、初めて銃を見た。
日本人にとっての銃は、映画やテレビの世界のものだった。
本物を見ても、実感がわかなかった。
おもわず、そばに近づいて銃を触りたくなった。
オモチャにしかみえない銃に、好奇心が湧いたのだ。

兵士のそば過ぎると、庶民的な場所があった。
そしてそこには食品の市場だった。
風邪をひきながらだったが、ウキウキと見て廻った。
大好きな果物を、いくつか買った。
スイカ四分の一の大きさで100円もしなかった。
パン屋の店先では、ピザをカットで売っていた。
それを買い込んで、木の下にあったベンチに座って食べた。
こんな食事が大好きだった。
やはり、一人で過ごすのも良いものだ。

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