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お勧めシリーズ~「社会と人間を深く知る本」編

はじめに

 私は高校生まで読書の習慣がなかった。しかし、一人暮らしで自己を見つめ始めた大学生になってから、急激に読書を始めた。一人暮らしを始めたというのが大きかった。
 自分とは?社会とは?このことをいろいろな形で考えてきた。54歳の今も新たな課題が次々と現れているが、それをより根源的な視点で捉えられないかと読書し、思索する日々を送っている。
 そんな中で強烈に自分の思考、価値観の基盤を与えてくれた本を以下に紹介したい。

本の紹介

まずは、対人援助の専門書である。「バイスティックの原則」として掲げられている指針は、相手がたとえ友人や家族でも人に個として接する限り、適応ができる重要な原則だ。

健康面における孤独のリスクの高さは、つとに知られている。そこをさらに発展させ、人と人が繋がる効用を様々な研究から解き明かしている。まず人と繋がろうとすること。そして、その繋がる人を慎重に選ぶこと。さらにそのつながりを大切に育むこと。人生はつながりで決まる。

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歴史学者のハラリの著書は、この本のみで充分。続刊は思想として行き過ぎの観があるからだ。歴史の個々の事実をどう見るかも大事だが、そもそも歴史をどう見るのか?という俯瞰した視点の重要性が学べる。


歴史を振り返るとき、また、未来を想像するとき、人間は悲観バイアスが働いてしまう。その悲観を事実を持って打ち返した本。楽天的すぎるのは問題だが、希望をもつことはいかなるときも必要だ。

宗教の存在が進化論的に必然で大きな役割を担っていることを説いた本。宗教が世俗化して久しいが、宗教を代替する機能は何らかの形で社会に根付いていることも分かる。アメリカがメインだが、宗教の今と未来も言及している。生きることにストレスや不安がある限り、宗教的なものは人間や社会にどうしても必要なのだ。

タイトルにその意義は尽くされている。東日本大震災以降、寄り添うことの大切さは社会の様々なところで言及されているが、本書ではそのつらさを説いている。経済性、合理性の嵐を進む時代にあって、その主張は示唆に富んでいる。

「感情労働」の本質を余すところなく、伝えてくれる。高貴に仕事するためには、自分とチームを守る原則があることを知らなくては。言葉そのものこそ出てこないが、ネガティブ・ケイパビリティについても書かれている。

民俗学でいうところのまさに厚い記述で、ぐいぐいと引き込まれる。最大の成果は親を含めた周囲の老人への興味、敬意の醸成だろう。『痴呆老人は何を見ているか』が医師が書いた理論編だとすると、本書は民俗学者兼ケアワーカーが書いた高齢者の世界のリアル編である。

トルコという「国家」が嫌いになり、根を持つ「庶民」が好きになる本。それにしても言語というのはなんと政治的で、だからこそ個々人の根源、アイデンティティに関わるものなのか。もっと国家と言語に自覚的にならなくては。

活字文化を極限まで使い倒し、メディア=人間拡張の技術を通して、現代を語る。これは読みながら、感じ、考える本で、記念碑として飾っておくものではない。

ここに書いてあることは美術史の本では、必ず触れられていることだが、それを13歳でも理解できるカタチに、「引き」の美学を発揮して、まとめている。たいていの13歳にとって読むのは大変だが、授業ならば、体験が可能だろう。解説は、本文に比べると、なんだかなぁ、という残念な気分になる。解説者の自己顕示欲の強さに辟易する。この解説がなければ、完璧な本。

造形、構造から絵の魅力を見い出し、鑑賞のための共通の基盤を提示してくれる。絵の歴史や背景、アトリビュートなど、よくある名画の見方に出てくる「絵の要素・内容」には、あまり触れず、造形だけで美を語る。和書では類書が少ない。

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