見出し画像

同期の大園 6. 後輩の谷口ちゃん

 
「せんぱ~い」

 とコーヒーカップを片手に駆け寄ってきた。

俺「おはよう谷口ちゃん」

谷口「おはよーございます!」

 後輩の谷口。
 教育係を任されていたこともあってか、妙に懐かれている。

谷口「うんしょっ」

 随分重たそうなカバンだ。

俺「重そうだね。何が入ってるの?」

 と言って彼女の手からするりと奪う。

俺「部署同じだし机まで運ぶよ」

谷口「ありがとうございますっ! 先輩ってナチュラルにカッコいいですよね」

 って上目遣いに微笑んだ。

 可愛い……まさに、天使。

 地上に降りてきた天使とは彼女のことだろう。 間違いない。

俺「褒めても何もでんぞ」

谷口「お世辞じゃないですよっ! 本当にそう思ってます」

俺「そりゃ光栄だ。……それにしても――これ、よく運べたね」

谷口「愛季こう見えても力あるんです」

 腕をまくって力こぶをして見せる。
 そんな仕草も。

 可愛すぎる……。

谷口「――あっ」

俺「え?」

 谷口が持っていた紙コップがいつの間にか消えていた。

 コーヒーだろうか。

俺「――っぃ!?」

 それが俺の股間に降り注いだ。

俺「アッチッチ! アッチ!」

谷口「あわわわ!? ご、ごめんなさい! 今拭きます」

 慌ててハンカチを取り出す谷口。

俺「え? いや大丈夫、そこは自分で」

谷口「いえいえ。愛季に任せてください」

 ゴシゴシと拭きだした。
 自然と前かがみになっていたから、ゆるんだ服の隙間から小ぶりなそれが顔を覗かせる。

 俺の視線がそこに釘付けになった。

 まずい……息子よ。耐えろ……。

谷口「んしょ……んしょ……」

俺「――っ」

 桜色の蕾が見えかけて慌てて視線を逸らした。

 その先に、
 

俺「 !? 」

  

 鬼がいた。

  

 エレベーターの前にて仁王立ちし、 こちらをジト目で見つめる鬼が――



大園「――あ?」
 

 もとい、天使がいた。
 

大園「ふふ」
 

 悪魔のような天使の笑顔だった。


 
 この後、エレベーターの中で踏まれ続けた左足がめちゃくちゃ痛かった。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?