同期の大園 9. お願い事
大園「ねぇねぇ……」
俺「……」
大園「ねぇってば……」
こ、こいつ……会議中だぞ……。
あらぬ所をつんつんしてきた。
大園「聞こえてるよね?」
俺「お前まじでふざけんなよ……」
大園「だって、無視するんだもん」
『――ん゛ん゛』
と課長に一瞥されて背筋を伸ばす俺と大園。
……
大園「ねね」
今度は耳元に口を寄せて小声で話しかけてきた。
俺「……何だよ」
大園「何でもない。呼んでみただけ」
――はあ?
危ない。 顔が可愛くなかったら張り倒していたところだ。
俺「――ぃ!?」
誰かに脛を蹴られた。
武元「……いい加減にしぃや」
口パクだったが、そんなところだろう。
向かいの席から呆れた眼差しで睨んでくる武元。
なんで俺なんだよ! 元凶はこいつだろう!)
少しだけムッとした。
やけに距離が近い大園を退けようとして、少し乱暴に手で押した。
目線だけは武元と睨み合っていたからか――むにゅっ、と何か柔らかい物を掴んでいた。
大園「ぁんっ」
と甲高い声が室内に響いた。
場が凍り、全員の視線が集まる。
穴があったら入りたいとは正にこの事だ。
外からコゲラの鳴き声が聞こえてきた。
ああ、頼む。お前の巣に俺も入れてほしい。
本当に、切実な願いだった。
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