同期の大園 AFTER_STORY 3. 新居にて
「お邪魔しま~す」
井上「おお~、ここが二人の愛の巣か~」
武元「いや、言い方っ」
俺「はは……まぁ、間違ってはないな」
玲「にゃはは」
……
武元「それにしても、四人で集まるのも久々やんな」
俺「確かに」
玲「そうだね~。また皆で集まろうよ」
井上「ほんなら、ここが新しい拠点やね」
武元「いやいや、それはどうなん? さすがに悪いんちゃうんか。なぁ?」
玲「私はいいよ~」
俺「俺も別に構わんぞ。前だって俺んちか玲んちが大半だった訳だし」
井上「ほな決定!! あとは梨名たちが泊まる部屋も用意してもらって」
武元「さすがに図々しいやろっ」
玲「あはは。……ただ、井上は今度吐いたら出禁にするからね」
井上「え? ぁ、はい」
(そういえば前科持ちだったな)
玲の部屋に集まった時に井上が飲み過ぎて戻した――という懐かしい話だ。
武元「そうそう井上のことなんやけど。この子、かなりの優良物件を捕まえたらしいで」
玲「えー、なにそれ。聞きたい聞きたい」
「いやいや」と照れた様子の井上。
武元「なんとな、年収がウン千万もあるんだとか」
(な、なんだと!?)
思わず立ち上がる。
俺「そ、そうだ。井上に飲ませたいと思ってた酒があるんだ。しかも滅茶苦茶高いやつ」
玲「あ! 私も井上が好きそうなお菓子を用意してたんだ。めっちゃ高級なの」
武元「うっわ露骨やん。ほんま現金な夫婦やなおい」
玲「え~! そういう唯衣ちゃんだって、最近井上に甘くない?」
俺「心なしかツッコミも弱いしな」
武元「ツッコミは関係ないやろっ」
井上「……ちょっと梨名、皆の事を信じられなくなりそうやわ」
俺「分かる。信じられるのは金だけだよな!」
井上「…………はぁ」
うなだれる井上。
(あら?)
武元「この馬鹿」
俺「……すんまへん」
玲「じょ、冗談だよ」
慌てて慰める。
井上「……」
これはまずいな。
本気で落ち込んでいるようだ。
どうにかせねば……
(そうだ! 確かこの辺に……お!)
目的の人形を手に取る。
俺「井上!」
集まる視線。
俺「これを見ろ。新居にて、手にキョンシ――
これ以上は俺の名誉の為、記憶から消すことにする。
唯一覚えていたのは、しばらくの間、冷たい視線が突き刺さっていたということだけであった。
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