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同期の大園 5. 唯衣の憂鬱


大園「唯衣ちゃん何か悩み事?」

 頬杖をついていたからか、もしくは盛大に溜息を吐いたからか。

 どちらにしろ――

武元「……そうなんよ」

大園「私でよかったら聞くよ~」

 ようやくといった形で訊ねてきてくれた。

武元「あんな、どっかのな、誰かさんたちのことなんやけどな」

大園「うんうん」

 真面目な顔して大きく頷いている。
 同性から見ても可愛らしい。

武元「……一目憚らずにいちゃいちゃしとるんよ」

大園「うへえ。それはきついね」

 と苦い顔をする大園。

武元「この前なんて、うちらが見とる前でキスしとったわけ」

大園「あひゃ~」

武元「しかも胸まで揉ませんとんのよ」

大園「わぁ~お! それはやばいね」

武元「……うん。……はぁ~あ」

大園「まぁまぁ元気出しなよ」

 ちょっとだけイラっときた。

(あんたらのことだよ!!)

 って大声で突っ込みたかった私は、テーブルに突っ伏すように腕を広げた。
 そうやって、また大きく溜息を吐いた。

 

 


「あ! 大園さん! いたいた。探したよ~」

大園「部長さん。どうしました?」

 一週間前に新しく赴任した部長がやってきた。

新・部長「えっと、お昼でも一緒にどうかなって?」

大園「すいません、先約がありまして……」

新・部長「あ、じゃあさ。仕事終わったら」

(わからないかな~。脈がないのが)

 明らかに外行の顔で対応している大園だ。

大園「すいません。夜も用事がありまして」

新・部長「そ、そうか。……そうか。う、うん! じゃぁ、それだけだから!!」

 しょんぼりした顔で去っていく新・部長。
 

武元「いい人そうやし、顔だって悪くなくない?」

大園「ぅ、うん……」

武元「…………好きなんでしょ?」

大園「え?」

武元「あ、ちゃうでちゃうで。部長さんのことやなくて、――あいつのこと」

 そう言って入口に目線を送くる。

「おはよーございまーす」

 同期であり腐れ縁である”あいつ”が出社してきた。

大園「へへ。バレちゃってたか」

(そりゃね……そんな顔しちゃってたら誰だってわかるよ)

 先ほどとは打って変わり、恋する乙女のような顔をしている。

武元「告白したらええんちゃう?」

大園「え!? う~ん。……勇気がない」

(どの口が言うんよ……公衆の面前であんなことまでしておいて……)

武元「案外モテるで、あいつ。……顔がいい、ノリがいい、仕事ができる。うかうかしてると誰かに取られちゃうかもよ」

大園「うん……」

 しおらしく口をすぼめる大園。


(あかん! なんやその顔! 可愛いやんけ!)

 危うく百合の園に落ちかけた。

 
「おっす」

武元「うい~」

大園「おはよっ」

 ぱぁっと笑顔が咲いた。

井上「おはよ~。なぁなぁ梨名な! 効きオレンジジューズができるんだけどさ」

武元「へー。すごいね。うん。すごいすごい」

(ごめん、井上。ちょっとうるさい)

「今日終わったら、飲みにいこうぜ」

大園「うんうん! いこ~いこ~」

武元「!?」

(……っほ、良かった)

 部長には聞かれていないようだ。

大園「えへへ。楽しみ~」

井上「……カシスでもわかるかな?」

 楽しそうに談笑する二人と井上。
 そんな彼女らを横目に、

(はよ付き合ったらええのに……)

 と何度目かになる溜息を吐いたのだった。

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