同期の大園 AFTER_STORY 1. 二人
「先輩」
「ん?」
「ん?」
二人して同時に振り返った。
後輩「あ、奥さんの方じゃなくて」
私「ねぇ! 奥さんだって! えへへ……奥さんだって!!」
嬉しくなって思わず彼の肩を叩いた。
彼「痛いッ痛い」
後輩「あの~」
彼「ああ、悪い。どうした?」
後輩「頼まれていた分の仕事が終わりました。お納め下さい」
彼「どれどれ……うん、完璧だ。……ちょうど時間だし上がっていいぞ」
後輩「そうですか。では、僕はおっぱ……間違えました。歯医者に行こうと思います。……お疲れ様です」
彼「あ……ああ。お疲れ様」
一礼して去っていく後輩。
私「面白い子だね」
彼「分かる? 根は真面目で良い奴なんだけど、少し変わってるんだよなぁ」
私「そこも含めて面白そう」
彼「お前なぁ、他人事だと思って……」
私「いひひ」
「あ~。○○君!」
課長がお呼びだ。
「はい」
「はい」
またしてもシンクロした。
見つめ合う彼と私。
課長「あ~コホンッ。それで、えっと……」
私「あ、玲で大丈夫です。ちゃん付けでも全然!」
課長「そうかね。……では、玲ちゃん」
私「はい!」
課長「この資料をお願いしたいんだけど」
私「はい。任せて下さい!」
数分後。
部長「玲ちゃん、コーヒー淹れてきたよ」
私「あ、ありがとうございます」
社員A「玲ちゃん、頑張ってね」
私「はい。がんばります」
社員B「玲ちゃん玲ちゃん……」
なんてことがあり、皆の優しさに心が温かくなった。
私「えへへ。皆さん優しいね」
そう言いながら彼の手を握る。
彼「……ちょっと! 玲は病み上がりなんですから、あんまり構わないで下さい!」
抗議するように立ち上がる彼。
私「ぁ……」
するりとほどける二人の手。
社員C「あんなこと言ってますよ!」
部長「玲ちゃんを独り占めする気だ!」
課長「むむ……なら転勤させるか?」
社員D「でもそうなると、玲ちゃんも一緒に……」
やいのやいのと盛り上がる社員たち。
彼「おいおい、俺の扱いひどくないか!?」
呆れたように座り直す彼。
(……!)
再び右手に感じる暖かな温もり。
私「……むふっ」
ダメだ。
上がってしまう口角が抑えられない。
皆に見えない机の下。
今度はお互いの指と指を絡め合う私たちであった。
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