同期の大園 3. バンザイ
『君に会えてよかった~このままずっと~ずっと~ラララふたりで~』
……
『イェ~イ』
パラパラと湧き上がる拍手。
部長「それにしても大園さん、ウルフルズなんて良く知ってるねー」
大園「へへ、こういう時の為に色々勉強してるんです」
会社の飲み会。 その宴会の席にて、カラオケをするのがうちの定例となっている。
えへへ……楽しいなぁ。
一緒に歌ってたのは部長だけど。
課長「次は××歌え~」
××「よーし、じゃぁ……」
××さんと入れ替わるようにステージを降りた。
大園「――ぇ!?」
ステージ袖のちょうど死角となっている隅。
……え? 嘘……やだ……。
部長と二人。
お尻、触られてる?
部長「いやー玲ちゃん歌うまいねぇ~」
大園「あ、はい。ありがとうござッイ!?」
強く揉みしだいてきた。
ぶ、部長さんだいぶ酔っぱらってる。
部長「それにしても、プリプリだね」
大園「……ぁ、ぅ……」
パンツの中に滑るように侵入してきた部長の手。
こ、このハゲ……。
我慢の限界だった。
大園「ッ――」
だけど、どうしてだろうか。
…………ぅぅ。
体は動かなかった。
部長「ささ、飲み直そう」
大園が部長と二人で座っているのが見えた。
あれ? やけに近くねぇか?
不自然な距離。
困惑しているかのような表情。 僅かに紅潮している頬。
……嘘だろ? あのハゲ、まさか――
間違いない。触っている。
俺ですら触ったことがないのに!
不埒な理由で憤る俺。
おもむろに立ち上がり、
俺「おい!」
部長の胸倉を掴む勢いで近づいた。
俺「お――ぶべ!?」
と何かが顔にめりこんだ。
そこで突然。
大園「てんめぇえ! このハゲが! なにしとくれとるんじゃあ!?」
ぶちぎれる大園。
何事かと一同の視線が集まった。
俺はというと、大園の肘打ちを顔面にくらい悶絶していた。 情けないことに。
ハゲ「……へ? お、大園さん?」
困惑するハゲ、もとい部長。
大園「さっきからセクハラばかりしやがって、出るとこ出てやんからよお? 覚悟しけよゴラァ!」
課長「セ、セクハラ? 部長が?」
楽しい雰囲気の飲み会だったが、それどころではなくなった。
××「と、とりあえず大園さん落ち着いて」
武元「あ、あかんで。今は」
宥めようとした××。
大園「うるさい! 〇ね!!」
××「あべっ」
強烈なアッパーを顎にもらい撃沈した。
武元「あーいわんこっちゃない」
大園「全員ブチ〇す!!」
物騒なことを言い出したぞ。
武元「やっば、退散退散……」
見境なく暴れ出す大園。
男連中がなんとか抑えようと近づいていく。
……よせ。
そのモンスター、空手有段者だ。
課長「あべし!?」
先輩男A「あべし!?」
社長「あべし!?」
死屍累々。
飲ませすぎた。
大園は極度に酔っぱらうとモンスターと化すのだ。
最近は飲ませ過ぎないようにセーブさせてたのに。
飲み会の席で暴れることなんて今までなかったのに。
全部、部長のせいだ。
……死んだふりしとこ。
寝そべったまま瞼を閉じる。
嵐が過ぎるのを待つのだ。
「……」
大園「おい!」
俺「へ!?」
大園「助けに来るのが遅いんじゃぁ!!」
理不尽だ。
俺「ひでぶ!?」
強烈な一撃を腹に受け、
……っひ、ひどい。
バンザイをするかのような体勢で散る俺なのであった。
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