救出作戦

 まだ夏が来る前の都内の公園の一部でのこと。この公園は東京ドーム5個分もある。 
 その中の一本の木に向かって靴や枝を投げている少年ふたりがいた。傍にはランドセルが置いてあり、何をしているのか観ていると4、5メートルの高さの枝に靴が引っかかってる。少年に話を聞くと靴を飛ばしたら木の枝に引っかかってしまったということ。私も枝を拾って投げてみたがうまく当たらない。
 少し離れたところにボールで遊んでる異国のふたり組の女性達がいた。事情を日本語で伝えてボールを貸してもらう。バスケットのボールよりひとまわり小さなボールだ。少年たちの所に戻りボールを何度か投げて靴に当てるが紐が木の枝に引っかかって落ちてこない。少年や女性たちがかわるがわるボールを投げるが落ちてこない。
 私は近くに置いてある私の車に戻り小さな脚立を持って少年達の元に戻る。まだ靴は木の枝に引っかかったままで靴救出作戦に小さな子供のいる母親ふたりが参加していた。
 私は脚立に乗って手を伸ばしてもまだ1メートル以上届かない。脚立の上からボールを投げると靴には当たるが落ちてこない。何度か靴に当たって少し紐が伸びた。
 靴が少し下がった所を枝を掴んで揺らして、靴は私の手の中に収まった。みんなから、おおーっと歓声が上がった。靴の持ち主の少年は笑顔でお礼をみんなに言ってる。私に向かっても笑顔でお礼を言ってきた。
 この時は私ひとりでは靴を取ってあげることはできなかったと思う。ボールを貸してくれた方、救出作戦に参加していただいた方がいて靴を無事に救出することができたのだと思う。この場をお借りしてみなさまにお礼をお伝えさせていただきます。どうもありがとうございました。
 そして少年も無事に帰れて本当に良かった。きっともう、この少年は木の枝に靴を引っ掛けることはしないだろう。

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