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オレ. オレ.ハゲ〜 中国行きのスロウ・ボート


昔、池袋で夜のお仕事をしていた

何度か 繰り返し 指名してくれた青年がいた
けれんみのない 爽やかな人だった


しばらくして、わたしは引っ越しを機に
その店から他県の違う店へと移ることになった


青年に もしこっちに来ることがあれば
また、よろしくね
と、店名をメモした名刺を渡した


それから何年かの歳月が流れた


あるとき、新しい店にその青年がやってきて
再び 指名してくれた

青年は自分のキムタク風のウエーブのかかった髪を
いじくりながら 眩しい笑顔で言った


「オレ.オレ. ハゲ」


青年の髪の毛は池袋時代より 伸びていた

池袋時代は くりくりした高校野球の男児のようで
それは それで似合っていた


『オレ.オレ.ハゲ』


こんなにも リリカルな己を指し示す言葉を
他に知らない


わたしの自己紹介の文のいやらしさを想う

19歳年下の彼、、、

そこには そんな年下くんと一緒に暮らしている、わ た し
という、
見るひとによっては 鼻につく文字が並んでいる


うーむ

そのことに気づいていない訳ではない


なにか キャッチコピーを考えてみる


ぼく ぼく 下僕     違う
ワイ ワイ 卑猥     いやだ


ラーメン つけ麺  ぼくイケメン

それは狩野英孝の特許である
おまえはおまえの ホーホケキョを名乗れ


神の声が わたしに叱咤してくる


ホーホケキョ
ホーホケキョ


結局 わたしは自己紹介を新たに書き直す試みを断念する


オレ.オレ.ハゲへの道は
果てしなく遠い


友よ、中国はあまりにも遠い

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