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「テリファー」🤡🩸⛓ 血を撒き散らせばホラーファンは喜ぶのか?

映画は好きでもホラー映画を毛嫌いする人は多い。それは仕方のないことだ。ジャンルとしてのホラー映画を支えているのは、おそらく少数の好事家だろう。

私もその内の一人だというおかしな自負があって、ホラー映画は好んで観ていた。

だが昨日、「テリファー」というホラー映画を期待をもって観たのだが、それが妙な具合に揺れた。



「テリファー」はピエロ姿の男が人を襲っていく映画だ。

深夜、ハロウィンで仮装をした女の子二人がダイナーで食事をとりつつ酔いをさましていると不穏な男が現れる🤡

「見るからにこいつはダメだろうな」
という一目でホラーな風貌のピエロで、このルックスにはかなり力が入っているし、期待が持てる。個人的な感覚だが、ちょっと岡本夏生さんに似ていないか?

それも含めて怖いピエロだが、ただこのピエロが画面に終始露出してくるので、どんどん見慣れてしまうのだ。

このピエロのデザインが上手くいったことは分かるが、恐怖の対象が常に出ているとそこに緊張と緩和を感じない。

女の子二人に付きまとい、彼女たちを捕獲した挙句、二人のうち金髪で肉感的な方の女の子(ここにはすごくスタンダードさを感じた)をわざわざ裸に剥いて逆さ吊りにする。

黒髪のスレンダーな方の女の子は椅子に縛りつけられ、これから起きるだろう受け入れがたい出来事の予感に震えている。見たくないものをわざわざ見せつけられる場面は、人が他人の痛みを我が身のように感じる優しい性質を突いていてたまらないと思う。

ただ、肉の塊のように吊るされた先に殺された女の子の死体が画面の中でいつまでもぶらぶらとしているのがよくないと思った。程度の低いお化け屋敷に入ったようで、はっきり言ってしょぼく、チープに見えた。
こういった小道具は長時間映すのに向かない、はっきりと映してしまうとアラが見えて怖くなくなってしまうというものだ。


無目的な虐殺もいいが、血飛沫を上げながらバタバタと人を殺していくこのピエロには観ていても怖くはないしただただ不快だという感想をもった。

ホラー映画が嫌いな人の気持ちがすこし分かったのかもしれないという驚きはあったが、
こういったものを喜んで観ていたのかと少しばかりうんざりした。

けしてグロテスクなものをただ見たい訳ではないのだ。もっと上手く怖がらせてほしいし、その怖さを友達や誰かに話したくなるような、伝染させたくなるような気にさせてほしい。

どうやら自分はホラー映画・スプラッター映画にはそういうものを求めているのだなと引き算的に理解させてくれた映画だった。

「テリファー」を観た後、口直しに濱口竜介監督の「寝ても覚めても」を観た。これは映画史に残る傑作だと思った。この映画にもホラー的部分があるのだが、まさか主演の二人がお芝居でなく本当に愛し合っていたとは思わなかった。


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