大失恋の話⑤ 暗雲。
私から見て彼は魅力的に見えた。
きっと他の同年代の女性から見てもそうだったのだろうと思う。
結婚歴がない40代半ば、安定した収入がある。
育ちが良く、女性の扱いに慣れていて、見た目に女性に嫌われる要素がない男性と言うのは…
私の周りには少ない。
そして、彼には溢れんばかりの前向きなエネルギーが満ち満ちているように見えた。
たくさんの可能性を秘めていると周りの人に思わせるような光があった。
私には不釣り合いだったのかもしれない。
ある日、私は見てしまった。
仕事中に彼のスマホを預かって、顧客のデータを入力しておいてほしいと言われ作業中だった。
LINEの通知と言うのは、わざわざ開かなくても設定次第によってプレビューされるものである。
親しげなメッセージ、今日あった事の報告。
まるで愛する人や夫に送るような内容…。
息ができない…、その時、実際、私の呼吸は止まっていたと思う。
私はその日、彼に何も言えなかった。
必死で笑顔を作って何とか終業時間を迎え、自宅に帰ったことを覚えている。
帰りの電車の中で涙が止まらなかった。
今思えば、その時彼にきちんと聞けばよかったのだと思う。
そうする勇気すらないほど、私は恋愛もしくは人間関係に怯えていた。
彼を失いたくなかった。
そんな簡単なことから、ボタンの掛け違いが始まった事は間違いないのだろう…
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