見出し画像

やっぱり風越は本物だった


心動いた日だった。書きたい、書かなきゃ、と思ったので、帰りの新幹線であわててnoteをひらいた。

去年風越で作っていた本が出来上がった。
タイトルは『プロジェクトの学びでわたしをつくる』
風越の学び作りの理論と実践をまとめた教育者向けの本。私がやってみたいと司書の先生に声をかけて始まった本。去年のしんどさの一番の理由であり、本当に関わらせてもらえて幸せだった本。
関わった人全員がこだわって作った本は愛おしく、紙とインクのいい匂いがして何度も本に顔をうずめた。お世話になった人たちがずっと嬉しそうな顔をしていたのが嬉しかった。

何十年も現場でやってきたベテランで人間味のあるお父さんのような校長のごりさん、こだわりをもって愛のある厳しさのライブラリアンのみっちゃん、プロ中のプロの藤原印刷さん、あたたかいイラストで空気感まで表現するおぎーさん、スケジュール押しまくりでもいいものを作ろうと見守ってくれた編集者の坂口さん、なんて贅沢なメンバーに入れてもらったんだろう。


関わった方みんなで打ち上げをした。3時間ずっと、本の素晴らしさと、本に関わった一人ひとりのすばらしさを語った。

おぎーさんの、風越の空気をそのままに表現したイラストのおかげで、大切したいと思える本の表紙ができあがった。わざわざ学校まで来てラフを描き、ギリギリまで何度も色を調整してくれた。
藤原印刷さんの特色2色刷りへのこだわり、DTPのセンス、フォント選び、水彩画をそのまま印刷できる色調整の技術。専門的な話なのに、なんともわくわく話してくれるからとても愛が伝わってくる。「紙選びは大事ですよ!」と言ってわざわざ何種類も紙を持って軽井沢まで来てくれた営業の小池さんの丁寧さ。営業の方に対するイメージはあまり良くなったんだけど、自社の商品に愛を持っている営業の方は素敵だなと初めて思えた。
風越スタッフの内容の厚み。何度も納得ができるまで赤ペンを入れつづけたみっちゃんのこだわりと、現場に届けるまでが本作りだというごりさんの実践者の熱。
みんな、この本についてなら何時間でも話せるくらい愛がある。

なんとも贅沢な時間だった。私、本当に幸せ者だなと思った。何もスキルもないし、結局最後まで関われなかったのに、ここに居させてもらって、こよみちゃんがいたから出来たよと言ってもらった。自分の書いたページも、名前もちゃんと載せてもらった。前世で何かいいことしたんだろうなあ。




風越で得た、一番大きいことを思い出した。
本気でものを作る人たちはかっこいい。

風越どうだった?と聞かれたとき、しんどかったしうまく行かないことばかり思い出してしまいがちだったけど、やっぱりあそこで起こっていたことは全部、本物だった。本物だったからこそしんどかったし、心が動いていたのだ。

私は小さい頃から先生がこういうものを求めているんだろうなということを予測して行動していた。読書感想文も、自分の感想3割、先生に認められそうなこと7割で書いていた。

風越はそれがバレる場所だった。わからないことを取り繕うのではなく、ちゃんと誠実に、わからないことをわからないままにしている。嘘をつかないでやろうとしてる。ちゃんといいものにしようとしている大人たちを何度も見て、その度に自分がこれまでやってきた取り繕いに恥ずかしくなった。でもやっぱり、私には取り繕うクセがついていることを認めるところからしか始まらないんだな、とも思った。

いいものができた!と思ってからさらに赤ペンを入れ続けるくらいのこだわりが、私には必要だ。よく生きるとは、なんでもいい感じ〜なのではなく、ちゃんと納得のできるまで突き詰めた上でのいい感じなのだ。自分を誤魔化してボーダーラインを低くしても何もいいことがないよね。(自分で書いててぐさっと来たけど、本当にそうなんだよね。)

そこまで本気になりたい。誠実に、嘘をつかず手を抜かずやりたい。じゃあ、私が今そこまで本気でやりたいことって何なんだろう。そこだよね。

生きる意味探しと恋愛は似ているところがあると思う。惚れやすさや、うぬぼれが大事なんじゃないかな。
この経験が自分の人生大きな衝撃を与えた、という経験を素直に信じてみること。
目があっただけで一目惚れしてしまうくらいの惚れやすさがあれば、些細な出来事だったとしても自分はこのために生きていくんだ!という生きる意味が見つかるのかもしれない。

風越で本気の大人たちと一緒に本を作ったことは、私の人生にどれくらい衝撃を与えるんだろう。いや、それを決めるのは多分私なんだろうな。どこまでこの経験の大きさを信じちゃうか。信じちゃえば、多分そのまま突き進める。いや、むしろ信じちゃうしかない気もしてきた。

もともと将来を考える上での冷静さが強い私だけど、今回ばかりは信じちゃってもいいのかもしれない、と思っている。


人生のどこかで、本に関わる仕事をしたい。本気でものを作る人たちと一緒に仕事をしたい。



久しぶりに行った風越は、「帰ってきた感」がちゃんとあって、少し驚いた。帰ってきたと思える自分が嬉しかった。
私去年ここにいたんだな。みんなの中に残ってんたんだなと思えた。

「髪切って綺麗になったね」といってくれる子と、「髪長かった方が可愛かったよ」といってくれる子がいた。小学1・2年生の、思ったことそのまま言う感じ面白いんだよな。
みんな、また帰っておいで、といってくれた。去年の1年間はこれからも、じわじわと続いていくんだ。1年間腐らず本気でがんばった私ありがとう。これからも誠実にやっていこう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?