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先手を打ったデ・ゼルビ=サッスオーロ、フォンセカ=ローマの3バック形成の変更【セリエA 第22節 サッスオーロ×ローマ】

セリエA第22節サッスオーロ(15位)対ローマ(4位)の試合。サッスオーロはデ・ゼルビ監督2年目でより味は出てきたが、自陣でブロックをつくる相手に対する崩しがうまくいかず、カウンターでやられる試合が多いためこの順位。ただ、前から積極的に奪いに来る強豪チームなどを相手にすると一気に恐ろしいチームへと変わる、というポゼッション志向の中堅チームにありがちなシーズンを送っている。ローマはフォンセカ監督1年目で多くの怪我人を出しながらもなんとか4位につけている。

・フォーメーション

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お互いシステムは4-2-3-1を採用。サッスオーロはトップ下にトラオレが入ったりすることもあるが、出場停止のCBぺルーゾの代わりにフェラーリが入った以外は現時点でのベストメンバーという感じ。怪我人続出のローマだが前節ラツィオ戦と同じメンバー。

・サッスオーロのボール保持、ローマのボール非保持

サッスオーロのビルドアップは後ろから繋いでいく意識で、まずは4-2-3-1のままボールの前進を試みる。対するローマは4-1-4-1のマンツーマン気味ハイプレッシングでボール奪取→ショートカウンターを試みる。ジェコ+1でCBにプレッシング、クリスタンテがマークを引き継ぐが、サッスオーロはジュリチッチがフリーの状態になっている。

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・ローマのボール保持、サッスオーロのボール非保持

ローマのビルドアップも後ろから繋いでいく意識。サントンが降りてスピナッツォーラが上がる片側SB上げによって3バック形成。中盤は基本ボックス型で、ヴェレトゥ、クリスタンテがサイドに流れることで相手DHを釣りだし中央でペッレグリーニやクライファートへのコースとスペースを創出、あるいは流れたヴェレトゥを起点に斜めにパスを入れたり、サイド攻撃を組み立てていく。対するサッスオーロは4-4-2の形でゾーンで守る。前線2枚はCBから中→中でボールは前進させない意識。

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・完璧な試合運びのサッスオーロ

試合開始直後はローマのプレッシングに引っかかるシーンが見られたが、サッスオーロはデ・ゼルビのチームらしく多様な攻撃パターンを見せ始める。まずは4-2-3-1の形のままのビルドアップでフリーのジュリチッチをうまく使うことでボールを前進させる。ローマのアンカーであるクリスタンテはもともともう1列前の選手であり、ジュリチッチへのコースを消すポジショニングは試合を通してできていなかった。ボールをキープできるベラルディがローマの注意を引き付け、中央でフリーのジュリチッチからCB-SB間にスルーパスを通されまずはサッスオーロが先制。

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さらにロングカウンターからもう1点。自陣でボール奪取に成功したサッスオーロはスピナッツォーラの裏のスペースでベラルディがボールを受けスモーリングを釣りだす。スモーリングを釣りだすことで大きくなったCB-CB間をトリアンがインナーラップで抜け出すとあとは折り返してカプートが決めるだけ。ピオーリ就任直後のミランもそうだったが片側SB上げの可変システムにおいては、中盤の選手の質であったりポジショニングなどでリスク管理を徹底していなければ相手にいいように利用されてしまう、という代表的なシーンだった。

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さらに相手陣内深くでのネガティブトランジションでは、そのまま前線から連動してプレッシングを行うサッスオーロ。SBから中盤を経由してボールを前進させようとしたローマのビルドアップをカットして、ロカテッリ→ベラルディ→ジュリチッチであっさりと3点目。サッスオーロは前半だけであらゆる局面から点を奪っていった。

ここまで完璧な試合運びを見せるサッスオーロはさらに多様なビルドアップでローマのプレッシングをいなしていく。それまでは4-2-3-1のままビルドアップをしていたが、DHのどちらか、あるいは2人がSB落ち、もう片方のDHが中盤底に、あるいはジュリチッチが中盤底まで降りてくる4-1-4-1のような形でのビルドアップを見せ始めることで再びクリスタンテを混乱させ、サイドからの攻撃でSBやCBを釣りだそうと試みる。

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・3バック形成の変更によるフォンセカ監督の修正

すでに試合を優位に進めていたサッスオーロがさらに先に一手加えてきたことでローマの守備は崩壊。しかしほとんど完璧な試合をするサッスオーロ相手に、フォンセカも前半終盤で修正を試みる。まず片側SB上げによる3バック形成から、クリスタンテが落ちることによる3バック形成に変更。両SBに幅を取らせ、両WGを内側に絞らせることで中盤で3対2の数的優位ができる。序盤同様サイドに流れたヴェレトゥから試合を組み立てていくが、中盤3枚によって相手DHを動かして中央にスペースを創出することでチャンスを作り出すことに成功する。

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前半終盤に修正を加え、後半もこの形ではいったローマは、サッスオーロの守備の強度がガクッと落ちる後半にサントン→ブルーノ・ぺレス、ウンデル→カルレス・ぺレスを投入するなど攻撃的な選手をピッチに送り込み、どんどん攻めたてる。CKの流れから1点を返したローマだったが、69分にペッレグリーニが退場。直後にPKによってもう1点返したが、1人少ないながらもイケイケでマンツーマン気味のハイプレスを仕掛けたローマをあざ笑うかのようにカウンターでボガが決めてサッスオーロが4点目。結局4-2でサッスオーロが強敵ローマを破り勝ち点3を獲得した。

・ひとりごと

昨季から注目し続けているデ・ゼルビのサッスオーロと今季注目のフォンセカのローマの試合は、ファーストプランと追撃の一手によって前半で3つのゴールを奪ったサッスオーロが勝った。今季のサッスオーロを見ていると、ビルドアップでSBをあげずに中央から縦にズラしてレイオフによるボール前進や、この試合のような4-4-2での撤退守備→ハイプレッシングなど、昨季と違ってよりイタリア式のポゼッション志向フットボールになってきている印象。順位こそ13位だが、非常に興味深いフットボールを披露するデ・ゼルビを簡単に解任せずにいてくれているサッスオーロはいちセリエファン、フットボールファンとして本当にありがたいし、ミランが7試合でジャンパオロを解任させたことを考えるとよりそう思う。一方フォンセカのローマも前半終盤での修正はよかった。就任1年目でこれだけの怪我人が出ており起用できる選手も限られる中でCL争いをしているのは素晴らしい。個人的に今季のセリエAは、例年以上に面白い。

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