深夜バイトの思い出

私は大学2年生から始めたバイト先で、約1年間、深夜帯に働いていたことがある。

元々夜型人間で、2時すぎまで起きていることはよくあったから、時間帯に抵抗はなかった。
20時か22時かに入りで、家に帰りつくのは大体3時半前後。友達と遊ぶことやサークルなど、人と関わる用事に影響が出るのが少ない時間帯なので、私は深夜帯に働くことは結構好きだった。(今は体力持たないから、無理と思うけど。よく週3で働いていたなって気持ち。)

コロナ禍による人件費削減で、深夜帯は本当は3人配当なんだけど、いつも2人で回していた。ひとりはキッチン、ひとりはホール。私は基本ホール。時間帯は好き、でも、仕事は決して楽ではなかった。
深夜帯の最後のピークは1時になろうとする頃から始まる。なぜか満席になった日もあった。満席は普通だったら5人で回す。それを2人で回すのは本当にキツい。しかもただ回すだけじゃなくて、閉店作業を進めながら回さなきゃいけないので普通に地獄。キッチンに入ったり、ホールに出たり、慌ただしい。
加えて、この時間帯に来る客は殆どが酔っ払い。警察沙汰になったこともあるくらい、客層は良いとは言えない。
そんな人たちの対応に、トイレに行く暇さえない仕事の多さ。物静かな店長に文句を言ったことも何回かある。けど改善されることはなく、ずっと2人で働いた。
ペアを組んでいたのは、50代のポンさんと60代のマツさん。私はふたりとも、大好きだ。

マツさんとは、閉店した後、いつも散らかりきったホールで椅子に座って愚痴を吐き合った。ただし最後の片づけが待っているのでこの休憩はほどほどに。コンビニスイーツを買ってきてくれることも多くて、一緒に食べた。そして、事務所に戻って、帳簿を書き終わって、すべての仕事が終わってからが本番の休憩。まぁ毎回よく喋った。気づいたら4時なんてことがざらにあった。半分以上は仕事の愚痴で、あとは恋愛とか、人生の話とか。
私の3倍も長い時間を生きているマツさんから、学んだことはいっぱいある。そして、私のことを大切に想っていてくれたのが本当に伝わってきていた。ただただ楽しかった。
こっそり事務所でストロング缶で乾杯したことも、店を出て外で飲んだことも、一緒にコンビニに行ってファミチキ買ってもらったのも、いい思い出。

ポンさんは、私のことをたくさん褒めてくれた。本当に、よく褒めてくれた。シフトに入るたびに褒めてくれた。
まぁまぁ天然(というか抜けてて)なポンさん。ポンさんの仕事のフォローも結構していたけど、それもたくさん褒めてくれるし感謝もしてくれた(ので、仕事のフォローでイラッとなったことは全然ない)。私ちゃんと一緒に仕事すると早く終わるし、楽だなあって言われたときは嬉しかった。たくさん褒めてくれるので、シフトに入るたびに自己肯定感があがった。言葉にして伝えるって、とっても大事なことだなと思う。
そして、どんな時でも明るく、元気で、おしゃべりなポンさん。シンプルに、仕事を一緒にするのが楽しかった。ノーゲストの時にゲラゲラ笑ったのも、仕事が終わって疲れたねぇって言いあうのも。いつシフトに入っても笑っていた気がする。棚卸の日、店長にふたりで愚痴をまくし立てたのも懐かしい。

2人と組む深夜は楽しかった。仕事量は多くてきつかったし、定時に上がれたことは少なかったけど、一緒に喋りながら、愚痴を言いながらする仕事は楽しかった。

私は恵まれていたな、と思う。

今は、店がなくなったので、退職して、別のバイトをしている。

別れは突然。出逢いがあれば、別れはある。大袈裟なようだけど、そんな大事なことをじわじわ実感した深夜バイト。

親元を離れたこの地での、母のような、マツさんとポンさん。

私は深夜バイトをしてよかったな、と心から思う。

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