夜明けのチリトマト


「好きな食べ物なに?」
社会人になってから、嫌というほど聞かれた質問の一つである。
社会人になってからというよりは、人生で一番聞かれた質問かもしれないが、特に新しい環境に身を置くことになればよく聞かれる質問である。

この質問になんてことなく答えることができる人はコミュニケーション上級者だと思う。
好きな食べ物なんかいっぱいあるし、その時の気分によって変わることも大いにあるからである。

でも「人生で一番美味しかった食べ物はなに?」と聞かれたらすぐ答えは出てくる。
と言っても二択なので一番は決めずらいのだが。
「ひつまぶし」か「カップヌードル チリトマト味」である。

今回は後者の話。

社会人となった今、23時には寝て7時には起きる。昼ごはんは12時食べるし、夜ごはんは19時に食べる。それがルーティンである。
会社の先輩には「健康だけは気をつけた方がいい」と言われ、最近はカップラーメンを食べることはないし、特茶を買ってみたりする。それが大人なのかもしれない。
カップラーメンの全盛期は大学生だ。しかも、大抵夜ご飯を食べてから朝ごはんを食べるまでが彼のゴールデンタイムだ。
でもこのゴールデンタイムが自分は苦手だった。この時間に食べると高確率でお腹を下すのである。
だからみんなが美味しそうにカップラーメンを食べていても、「俺はええわ」って言って食べなかった。

でもとんでもなくお腹が空くときもある。
例えば徹夜で麻雀をして日が出るかどうかの微妙な時間帯。脳をフル回転させて遊んでいるせいか、体というより脳が食べ物を求めている。
例に漏れず、徹夜で麻雀をした日の夜とも朝とも言えない微妙な時間に誰かが「腹減った」と言い出し、近くのローソンまで歩いた。
誰かがカップラーメンはチリトマトが一番美味しいと言い出した。自分は食べたことがなかったのでテキトーに聞き流しながらカレー味を選んだ。「これお腹壊すな」と思いながら、何故か外でカレー味のカップラーメンを啜った。カレー味はおいしい確かに美味しいのだが、なんか噂のチリトマトが気になる。人が食べているものの方がおいしく見えるのはよくあること。そこで自分は初めて人からもらってチリトマト味のカップラーメンを食べた。なんてことない味だった。なんてことない味だったのに、なぜか忘れられないほど美味しかった記憶がある。多分今食べてもあの味には辿り着けない。

今日からゴールデンウィークだ。こんなに連休が続くのは大学生以来だ。今ならあの味にたどり着けるかな。今日の夜食はチリトマトにしよう。お腹は壊すけどね。

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