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歩けるか

アスファルトに木枯らし 駅前から34号に出る
コンビニと飲み屋 地方都市の鬱憤排気するダクト
路肩に吹き溜まる落ち葉の下で
僕らの情動はくすぶっていた

現実から逃れるための
シェルターみたいな地下室への階段
滑りやすいから怖がって降りて
今日も大荷物背負って落ち合う
始まりはここだった

持ち寄るアイデンティティ
弾丸みたいに込めるセットリスト
マスターに点火 吸音材で隔離された宇宙
風が吹けば飛ぶような 己の空虚さに反響する音符を拾って
あの人が繋いだ波形に血の滲む今日までを見た
憧れ 勢いとか 嘘や言い訳も連れ立った毎日
それにも終わりが来ることを悟った

過ぎ去る季節を横目に ベッドの脇は溜息で淀んで
借り物の語彙で着飾って 僕は僕なりのアウトプット
稚拙さが痛いって分かって書きとめる言葉
あらゆる創作が手放しで肯定されてんのに
それでも見過ごされる戯言 言葉の値打ちと葛藤

自暴自棄も甚だ 妄想する嘲笑
追い縋るのは未だ明日に期待する自分だ
「もう無理だ」とか「大人になれ」とか「寒い」って 言われなくても分かってる
だけどこうして書いてる
それでもやめない理由があった
歩き続けるあんたに貰った

人混みが苦手で 会話が苦手で
隠れて書き溜める詩 なけなしの私
所詮真似事といわれたってこれは剥き出しの自分
それを暴いたのは故郷の暗闇 星空の明滅

まだ歩けるか

まだ歩けるか

「もう一生飲まねえ」って毎回の後悔
副流煙とグラスの結露 アルコールは相当
嬉しい 楽しいのほかに 今日の会話の反省とか
挨拶し損ねた事とか 今までの散々が燦々と
全部が染み込んだ一枚板バーカウンター
手で撫でて気付く もう戻れない日
遠く離れていくのはここまで進んだって証だ

彼らを照らした陽が沈むように
楽しかった夜が明けてしまうように
惜しまれてゆくなら それが名声
そこにつどった音符 それは衛星

あの日 君の笑顔の裏拍は
日常と苦悩と痛みが埋める
それはきっと僕のと似ている
だからこの先も多分大丈夫

階段を昇る 歩みを進める
目を細めて朝陽と向き合って
今はっきりと地面踏み締める感覚

いつか終わってしまうなら
いつもそこが始まりだ

music&bar FAMEさん
大変お世話になりました。
僕の人生において大きな存在でした。

僕も歩いていかなくてはなりません。
ありがとうございました。

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