【あと9日】人間にとって最大の謎は人間なんだよな
その棚の名は「R」
娘の部活の待ち時間に、PCを携えて図書館に行った。
人のあまりいない場所を求め、図書館の奥の方に入り込み、案の定テーブルが空いていたのでそこを陣取った。
PCを開く。
キーボードに手を置く。
日記書こうかな。小説のアイデア出しもしたい。昨日思いついたあのネタをエッセイにしようか。
いろいろ考えつつ、ふと、そばの書棚を見た。
その棚の分類番号は、R。
0で始まる分類番号なら総記。1なら哲学や宗教、2は歴史と地理。9で始まる文学のコーナーなら常連の私。しかしそういう分類と、このRとは、どうも毛色がちがう。
R。
並んでいる背表紙のタイトルも、いちいちマニアックである。
知らない世界があるもんだ。
……ん?
『シュルレアリスム辞典』ってなんだよ。
「辞典」ということは、「シュルレアリスム」に関係する言葉を集めてるってことか。それにしても、それだけでこんな分厚い本になるか?
私はその『シュルレアリスム辞典』を、ギッチギチの本棚から抜き取った。
何がどうするとこういう発想が生まれて、しかもなんでそれを具現化しちゃったのか。頭の上にパン乗ってっけど? パンの上にさらに人とインク壺乗ってっけど?? なんでそこ???
今あらためてネットで検索し直して気づいたけど、この作品は、
ミレーに怒られんか?
パンの上に乗ってる2人の人物、これがミレーの『晩鐘』の男女なんですね。なるほど。
ミレーに怒られんか??
パン、実物だったんか?!?!
そんでそんなにパンの質に興味なかったわ。カタルーニャのパンってなに?
もう、自由が過ぎるというか、こじらせてるというか、お母さん心配だよ。
ミレーは1875年に亡くなっているから、ダリ、ミレーにキレられはしないが、呪われたかもしれないな。
そして私は思う。
逆にこれで表現しきれたんか? この先は「展示される表現」に収まらなかったんですって感じなのかもしれない、などとダリの気持ちに寄り添う真似事などしてみる。
真似事くらいにしかならないよ。なんか、寄り添おうとしてもめっちゃ跳ね返されてる感覚あるもん。写真なのに。
私の思想が浅いのかなあ。
『シュルレアリスム辞典』には、『名文』というページがあって、サルバドール・ダリの名文も掲載されていた。
……お経……??????
それはもうだれにも見わけることができないだろう。
ダリにも見わけられたか、はなはだあやしいぞ。
この「名文」は、もちろん前後があって、何かの作品について語られたうちの一部なのかな、とは思うんだけど、そこらへんを読解することが、私にはどうしてもできない。
なんなのよ。そもそも「薄い時計」ってなんなのよ。詩的でちょっとかっこいいじゃないのよ。意味はわかんないけど。
『名文』には、ほかの作家(アンドレ・ブルトンなど)の文章もあるが、ダリ、突出して読者の理解というものを求めていない。
清々しい。いっそ清々しいほどに突き放されている。
ここでもう一つ、私の目を引く作品に出会ってしまう。
画像を貼り付けられないので、各自ググっていただければ幸いです。
「できる」。
できるけど。できるけどさ。
夜のウォーキング中にこれ着た人に出くわしたら笑う。怖いけど笑う。
娘から「部活オワタ」とのLINEが来た。『シュルレアリスム辞典』を書棚に戻しながら、私はつくづく思った。
人間にとって最大の謎は、人間なんだよなーーー。
謎すぎるから、哲学や文学、芸術、宗教、科学、いろんな方法で、みんな昔から掘り下げようとしてきたんだ。なんとか解明してやろうと思って、あらゆる方法を試したんだろう。でも結局、いまだに、人間について人間にわかることって、そんなにない。
だから、人間は人間を探るために命を繋いでいるのかもしれない。
うわ、怖いな。
誰の意思でそんな無謀なリレーをしているんだろう。
ゴール見えないじゃん。ゴールがなにかわかんないし。
ゴールが見えたとき、人間というか、人類は終わるのかなあ。
人類が終わったら、人間が人間を探れなくなるから、なんとか命はつなぎ続ける必要がある。ゴールさえなければ永遠にゴールできない。
だからゴールが見えないように、もしくは、
ゴールなんてないことに気づかないように操作されてるのかも。
……誰に?
さて、
私がにわかにどハマリした「回顧的女性胸像」は、なんと日本にあるらしい。
なにそれめっちゃ行きたい。
この館、ほかにもダリ作品の所蔵数が半端ない。もう俄然行きたい。今から旅支度してしまいたいくらい興味ある。
でもHPを見ると、今は「回顧的女性胸像」は展示されていない。収蔵庫の中か、他館に貸出中か。修復中だったりして……パンを焼き直してるとかだったらウケる。硬さが違う! とかダメ出し食らってたりして。
しかし、見られないとなるとどうしても見たくなるのが人間のサガである。
展示のタイミングをチェックして、人生初の東北上陸を、福島のダリに捧げるのも悪くないと思った。
寝る前にストレッチ。