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Let's play a game

品詞のひとつ。活用のない自立語。
前後の言葉や文章などをつなぐ。
───【接続詞】


eスポーツにゲーム実況、TRPG。
私の周囲にもこれらに夢中の人は多くいます。
よく出来たゲームはもはや現実を超越するような世界観を持っており、ずっとそちら側に入り浸っていたい、という意見もいくらかは納得できます。

こういった新ジャンルのゲームが勢いを増すかと思えば、クラシックなアーケードゲームが復刻されたり、シンプルなボードゲームが売れていたりと、皆それぞれに好みのゲームをお持ちのようです。
しかもプレイヤーは子どもたちより大人の方が多いといい、これは"遊びと人間”について考えさせられる話です。

ロジェ・カイヨワを引き合いに出さずとも、遊びは仕事以前に、そもそもの社会活動のもとになったと言えますし、ゲームを通じて人が求めるものは、日常における息抜き以上のものがありそうです。


私ももちろんゲームは好きで、子どもの頃は両親との諍いの原因にもなるくらい、時間を忘れて熱中しました。
RPGにロールプレイング、クラフト、育成シュミレーション、アクション、パズル、レースなど、ジャンルを問わず、一人で、あるいは誰かと楽しい時間を過ごした思い出は数え切れません。

それでも、ここ最近はあまりゲームに時間を割くこともなくなりました。
これは飽きてしまったというよりは単なる優先順位の問題であり、別の分野にお金や時間を振り分けているからです。

もしも何か自分にぴったりのゲームが見つかったなら、数独の前例よろしく、寝る間を惜しんでのめり込んでしまいそうでもあるため、これが大のお気に入りです、といえるものが無いのは幸運なのかもしれません。


それでも、最近もっとも面白いと感じたゲームは?と問われたら、私は真っ先に『カタルタ』を上げます。
それは、一見するとトランプのようなカードを使って遊ぶゲームで、カードの一枚一枚には、それぞれひとつずつ接続詞が書かれています。

プレイに必要なものはといえば、電源やWi-Fiといった設備ではなく、何名かの同席者です。
私が遊んだ時には、一緒にテーブルについた全員が未知の人で、その人たちとカードを使って自己紹介をし合いました。

その際のルールは簡単で、まず一人が自分について、出来るだけ単純な事実を口にします。
それこそ
「ここまでは電車で来ました」
「好物はハンバーグです」
「去年から髪を伸ばしています」
などで十分です。

次に、発言者は配られたカードの中から一枚を選び、そこに書かれた接続詞を読み上げます。
そして、その接続詞につながる何かを口にすれば良いのです。


私の場合はこうでした。
まず最初の一言。
「大型犬と暮らしています」
そしてカードをめくると、そこに書かれた接続詞は
とはいえ

さあ、考え込むことなく即興でその先を続けましょう。
とはいえ、猫も好きで、地域猫の見守り活動に参加しています」

それを聞いて皆が面白がったり興味を持ってくれ、質問や共感の声が上がりました。
「動物が好きなんですね」
「私も地域猫を引き取って育ててます」
「わんちゃんはどんな子ですか」


他には、例えばこんな展開も。
「ここまでは電車で来ました」
と自己紹介した男性は、引いたカードが
だけど

するとその人は笑いながら続けます。
だけど、実は逆方向の快速に乗って、大変な目に遭いました」
笑い声が上がり、またもや質問と同意の声です。
「あるあるですね。自分もよくやります」
「いつ間違ってるって気づいたんですか?」
「無事辿り着けて良かったですね」


このカードを考案したという福元和人さんは、誰もが構えず他人とコミュニケーションを取れるように、ということをゲームの目標に置いたそうです。
たった一回遊んだだけでも、その目論見は完全に成功していると私は強く感じます。

ふと思いついて話す言葉はありきたりでも個性的で、その人の正直な姿を伝えます。
カードにどんな言葉が書かれており、そこからどう話が転がっていくかにもわくわくしますし、口にするのはごく短い一言に限る、というルールがあるため、気取ったり、緊張することもありません。

言葉自体が好きな私は、接続詞を主役に置くという、新感覚の言葉遊びをとりわけ魅力に感じましたし、その時を思い返してみても、かつて経験したどの自己紹介より、親密で楽しい場であったと思います。


そして、自己紹介に限らず、接続詞のゲームは様々な場で応用して遊べる気がします。ちょっとしたくだらないことや意外な事実が続出し、相手と盛り上がれることは間違いありません。

ただひとつ、欠点は遊ぶのに何人かの人を必要とするという点で、こればかりはAIの力を借りるわけにもいきません。人工知能はまだおそらくそれほど人間くさい存在ではなく、意外な行動に座を湧かせる、という展開にはならないでしょうから。

だったら一緒に遊んであげてもいいよ、という奇特な仲間が見つかれば最高なのですが。



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