旅のさなか手のひらにとどめて

さっきから、お空がぐぐぐごごごと響きはじめて、アスファルトがぱたたたたたと鳴りだしたから。

手を伸ばしたのです。
ベランダから身を乗り出して。
つかまえたかった。夏を迎えた証を。
生まれ落ちた君たちを。

手のひらで弾けた粒は千メートル上からえいやっ、と飛び降りたH2Oで、それぞれの着地点でそれぞれの川を流れるはずで、でも同じこの真っ赤な空を眺めたのだろう。

数億の旅路に幸あれ。
僕はここで、しかと見た。

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