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米粉スイーツを教室で小学生と一緒に作った時の、生徒のキラキラした目が忘れられない

 米粉パン屋を開店して1年が経った頃、小学校の先生が来店して、5年生の総合学習に協力してもらえないかと打診があった。

総合学習

 私は総合学習というのを知らなかった。「1年を通して生徒が自主的に社会のことを体験して学ぶことが目的」というようなことを先生から聞いた。お米を使ったスイーツの作り方を生徒に教えて欲しいとのことだったので、大まかなスケジュールを立てましょうと応答した。

田植えから始める

 どうせなら、田植えからやろうと思い、米粉を仕入れている長岡市の専業農家に相談した。田んぼの土と稲の苗を持って小学校の花壇に植えて育てることで話がとんとん拍子に進んだ。その後、生徒たちは農家の指導のもと日照不足やスズメの被害を避けるための工夫をしながら、秋には立派な稲穂が実った。

50年ぶりに教室へ

米粉シフォンケーキの作り方を習いたいという要望で教室へ入った。生徒たちが調べ上げたお米に関するさまざまな知識が、教室の三方の壁一面に貼られた模造紙に書かれていた。私が話したこと以外の栄養に関することなども調べ上げていて、いまどきの5年生は凄いと思った。そして、長岡の農家のことや私のプロフィール・似顔絵も書いてあった。家族や先生に聞いたりネットで調べたりしたと思うが、ここまでやるかと驚いた。
 中学校卒業以来足を踏み入れることのなかった教室に入ったのは50年ぶりだ。起業したから体験できたのだとしみじみ思った。起業はやってみないとわからない。

製粉も生徒の手で

 生徒たちは、農家の人と一緒に稲刈りをし、脱穀し、精米し、町中のお米屋さんに電話して製粉機を見つけ借りてきて粉にした。そして米粉のシフォンケーキを作ることになった。

キラキラした目

 生徒たちがお店を見たいというので、米粉パンの試食を出した。焼きたてのパンを食べながら、作り方やパン屋になった経緯などの質問をしてくる生徒たちの目はキラキラ輝いていて眩しかった。日頃、授業に関心があまりない一人の生徒が、総合学習になったら関心を示して積極的になり、リーダーシップを発揮し出したと先生が教えてくれた。「水田の7つの役割」という話を教室でした時も、真剣な眼差しで聞いていて、知らないことを知った喜びが感想文に溢れていた。
 生徒を5グループに分け、40人で教室でシフォンケーキを作ったとき、米粉は床にこぼれ、メレンゲは飛び散り、そのはしゃぐ様は教室が割れんばかりだった。

社会を知る学習

 4つの学校の総合学習に関わったが、先生が打診に来られて一様に話すことは、「教材を探すことで悩む」と「協力してくれそうな事業者を見つけられない」と。授業を進める過程でも、生徒の自発性を引き出すために先生自ら動けないもどかしさもあるようだ。
 ある小学校で、学園祭のような行事があって、米粉パンやシフォンケーキを生徒たちが作って販売させたいとの打診があった。諸事情で実現出来なかったが、私が作り生徒たちが販売することになった。生徒たちがすべて段取りしてポスターや値札を作り、呼び込み、商品の説明、受け渡し、会計まで担当した。その日は保護者が大勢買いに来て長い列ができ、完売した。本当は作るところからやれたら良かったのだろうけれど、お店の運営の一端を体験したことは教室内の授業とは違った学びができたのではないだろうか。

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