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『カフェと尾鷲の20年史』 〜サントス編〜

先日、開店20周年記念イベントとして『カフェと尾鷲の20年史』というトークイベントを行った。

カフェという『動きたくても動けない』、出張も転勤もない職業にて、つまり『定点観測地』としてのカフェから見た、『カフェの20年と尾鷲の20年』を語ってみよう、という試みだった。

そのイベント中ではカフェから定点観測して個人的に印象的だった尾鷲の出来事を語ったのだけど、その中でも印象的だったことを抜粋する。

2002年、カフェスケールが開店したその数ヶ月後、尾鷲の『紀望通り』(尾鷲駅から港へ抜ける大通り)に面して営業していた『サントス』という喫茶店が閉店した。

『サントス』は1970年代から営業していた、尾鷲で初めての本格的な喫茶店の草分け的存在として尾鷲では知られたお店だった。

かつて、『紀望通り』は、信用金庫、銀行、保険会社、証券会社など、金融関係の事業所が立ち並ぶいわゆるビジネス街だった。

そんな事業所が多くある通りの一角にあった喫茶店は、商談のために使われたり、仕事中の一服のために使うスーツ姿の人で賑わっていたという。

多い時で何百人もの来店があったらしい。

そんな『サントス』が閉店する時には、地元新聞で記事にもなった。

『サントス』を経営していたオーナーのインタビュー記事が掲載されていた。



『サントス』のオーナーは、尾鷲で喫茶店を開店するために、名古屋まで修行に行ったこと、開店の際には海外からパフェ用のグラスを取り寄せたりしたことが載っていた。

『サントス』の由来は、コーヒーの最大の産出国の一つであるブラジルにある港湾都市の名前で、品質のよいコーヒーがその港から世界に輸出されていた。

そんな名前の由来からもわかるように、尾鷲でも古くから本格的なコーヒーにこだわった名店だった。

尾鷲では知らない人がいないほどの名店『サントス』が閉店したのが、カフェスケールが開店した翌年のことだった。

スケールに来るお客さんからは「スケールがサントスに引導を渡したね」と冗談で言われたが、もちろん、開店してまだ数ヶ月の新参者のカフェが老舗・名店の『サントス』に引導を渡すほどの実力も影響力もあるはずもなく、恐れ多い冗談だった。
(『サントス』の閉店理由はオーナーによる体調不良によるもの)

引導を渡すとか渡さないとかいう話はともかく、しかし、多くの常連客を抱える『サントス』が閉店したことによって多くの『喫茶店難民』が発生したのは事実だ。

その証拠に、『サントス』閉店によって発生した『喫茶店難民』は、次なる居場所を求め尾鷲を彷徨い、その『難民』の一部はカフェスケールにたどり着いた。

開店初年度のカフェスケールに、かつての『サントス』の常連が多く来店していたことはお客さん同士の会話からも明らかだった。

繰り返すが、カフェスケールは『サントス』に引導を渡してなどいない。
それはあくまでお客さんの冗談だし、そんな実力や影響力がないことは自分自身が一番よくわかっていた。

しかし、(その後20年続く)新参者の店の発生と名店の勇退が同時期に重なり、もしかしたらそこが偶然にも『世代交代』の時期だったのかも、と振り返ってみて思う。

もちろん『世代交代』なんてことはその時は思っていなかったけど、心のどこかで名店『サントス』を引き継ぐに足る、尾鷲での『コーヒーの美味しい店』というポジションを勝手に拝命していた気分にはなっていたのかもしれない。

『サントス』というお店の、町に対しての立ち位置や志を(相手の了承も得ずに)勝手に引き継いだ気持ちがどこかにあったと思う。

あれから20年経ち、今、新しい、若い世代が次のことをやろうとしている。

いつかカフェスケールが終わることがあっても、僕が勝手に『サントス』の遺伝子を引き継いだように、誰かが勝手にスケールの遺伝子を引き継いでいって欲しいと思う。



cafe Scale

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