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自分が食べたいものを作る

シリコン型を使って2種類、お菓子を作ってみた。

『イチゴとルビーチョコレートのムースのレアチーズケーキ』

外側はレアチーズケーキ、中央はルビーチョコを使ったムース。

イチゴとルビーチョコレートのムースのレアチーズケーキ


『サヴァラン』

ラム酒をひたひたに浸したブリオッシュ。
中央にアイスを乗せて、いただきます。

サヴァラン

『イチゴとルビーチョコレートのムースのレアチーズケーキ』は、特にこういうレシピがあったわけでなく、なんとなく、自分でこういうものを作ってみたい、と思って作ってみました。

『サヴァラン』も、本来はアイスクリームではなく、生クリームをトッピングします。

が、アイスクリームにしてみたのは『アイスクリームを乗せたサヴァランを、私が食べたい』と思ったからですし、カフェのメニューとしてはピッタリだと思ったからです。




さて、今、『mitosaya 薬草園蒸留所で作る13のこと』という本を読み進めています。(『トンガ坂文庫』で注文して購入しました)

元『ユトレヒト』(書店)経営者江口宏志、イラストレーター山本裕布子夫妻が元植物園だった場所を改装して作った蒸留所
『mitosaya』のことを綴った本です。

以前読んだ江口宏志氏の前著『ぼくは蒸留家になることにした』という本がとても面白く、感銘を受けました。


江口氏はもともと書店を経営しており、しかし40代になって蒸留家に転身します。

その経緯が著書『ぼくは蒸留家になることにした』に書かれています。

その著書の第1章をかいつまでんで抜粋します。

『欲しいのは、技術』

ぼくがいままでやってきたことは、アイディア出しや、マネージメントやプロデュースがほとんどだった。
つま理、ぼく自身が最初から最後まで手や体を動かして、事をなしえてきたわけではない。
(中略)
 だからこそ、自分で何かをゼロからつくりあげてみたいと思ったし、そうしたことが出来「技術」をきちんともちたいと思った。
 ぼくが本というフィールドを離れようとしていた2010年頃は、右を向いても左を向いても、とにかく「洗練されたライフスタイル」だった。
 2011年にアメリカのポートランドで創刊されたライフスタイル誌『KINFOlK』は、そのブームの代表的なものだと言えるだろう。誌面で展開される、暮らしの上澄みをすくいとった、うっとりするような美しい情景。それはそれでいいのだけれど、その情景自体がスタイルのようになってしまった。
 本当に洗練されたものって、ぼくが出会ってきた料理家の人たちや『apartmento』やAbakeのように、それぞれの独自の背景があってこそなのだと思う。そうした背景をすっとばして、表面だけをなぞったような「ライフスタイル」があっという間に世を席巻するのに、ぼくは食傷気味だった。
 うわべだけの「ライフスタイル」が消費されていくのを横目で見ながら、ますます表現の下にあるしっかりとした「技術」の蓄積が自分にも欲しくなった。
 (中略)
そんなことを考えている時に出会ったのが、「蒸留」だった。

『ぼくは蒸留家になることにした』p40〜


江口氏は『書店』という仕事を通じて、時代の半歩先をいくラインナップをするとともに、ヒトやコトを『繋げる』ということをしてきました。

著書にも書かれているようにそれはマネージメントやプロデュースという立場でした。

江口氏は歳をとるにつれ、その立場にだんだんと不安を覚えるようになり、自分でも何かを作り出す『技術』が欲しいと思うようになります。

いわゆる『ディレクター』(監督)の立場での仕事ではなく、実際に手や体を動かして何かをゼロから作る『プレイヤー』になりたい、と思うようになったのです。

以前から自然や食や生活に根ざしたものに関わりたいと思っていた江口氏は、『蒸留』と出会い、その世界に魅力を感じ、『蒸留家』に転身。

私はこの転身は、『職業』を選んだのではなく、『生き方』を模索した結果だと思います。

「何になりたいかではなく、どう生きたいか」

将来、どんな職業に就きたいのか(何になりたいのか)ではなく、どんな生き方をしたいのかを考える。

江口氏は、『書店経営者』から『蒸留家』に職業が変わったのではなく、本質的には、『ディレクター』から『プレイヤー』に生き方を変えたなのだと思います。

私も、年齢的にはディレクターやプロデュースをする立場にいてもいい頃なのだけど.....というか、もう立場的には『経営者』なので、指示を出したり、舵取りをする立場なのだけど、でも、生き方としてはプレイヤーがいいと思っています。

プレイヤーとして、僕も日々『技術』を磨きたい、と思っています。


『ぼくは蒸留家になることにした』は、蒸留の知識や技術の習得のための修行時代のことはもちろんのこと、元植物園だった建物をどうやって蒸留所に改装したのかとか、酒税法や酒造の認可取得などの法律的なことの壁をどう乗り越えるか、蒸留所を経営的に維持するためにどうしたか、実際に蒸留酒を売るためのパッケージデザインやネーミングをどうしたか、などが書かれていて....いや、これは『酒造』や『蒸留』ということについて書かれているけど、本質的には、どの『生き方』にも共通する内容だと思いました。

私は、学生やインターンの人と話をする時は必ず、『何になりたいか/どんな仕事に就きたいか』ではなく『どんな生き方をしたいか』を考えるよう促します。

『ぼくは蒸留家になることにした』は、私がこれまでいくつか読んできた『生き方の本』だと思います。
(『仕事の本』『就職の本』ではなく『生き方の本』)

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そんな『mitosaya』の2冊目の本は、蒸留の話にとどまらず、住まいのこと、家族のこと、友人のこと、料理のこと、動物のこと、時間のこと....『自然の中での循環する生活』の中から生まれるこ全般について書かれています。
(『13のこと』とはそういうことです)




広大な植物園と畑で育つ果樹や薬草を使って、蒸留酒を作る。

普段、私たちが想像するお酒造りは、まず作る目的のお酒があって(例えば、日本酒、ワイン、スピリッツ、リキュールなど)、そのために必要な材料を確保する、という手順ですが、『mitosaya』はその時たまたま手に入った果樹や薬草を使って蒸留酒を作る。

手順としては一般的なプロダクトのそれではないかもしれませんが、本来、人間が口にするものを作ることにおいて、それが自然なことだと思います。

例えば、製菓やシロップ作りにおいても

『今日はたまたまこの食材が手に入ったから、その食材を使ってお菓子を作ってみました』

というのは、ごく自然なことですし、そうあるべきだと思います。

季節に関係なく、通年を通して定番で作っている焼き菓子もある一方で、それだけでは作っている方もつまらないので、季節の食材を活かしたお菓子作りをしています。

繰り返しますが、それは特別なことではなく、本来はそっちの方が自然なことです。

だからスケールでは「この前食べたケーキが、今日は無い」ということはしょっちゅうですし、逆に「時々しかメニューに登らないケーキがある」こともしょっちゅうです。

メニューにある・ないは、なんとなく、私の『気まぐれ』のように思われているかもしれませんが、『思いつきや気まぐれで作っている』というより、『その日に作りたい、と思う欲求に従って作る』という感じで作っています。

変な話ですが、長年製菓に携わってきて

『今、私が作りたいものが、今、みんなが食べたいものだ』

という横柄な態度で作っています(笑)

なんとなく、『寒い季節に作りたくなるもの』『暑い季節に作りたくなるもの』『雨の日に作りたくもの』『元気のない時に作りたくなるもの』というのがあって、その私の『作りたい』は、ほかの誰かの『食べたい』に繋がっている、と、そう勝手に思っています。

だから、あまり、メニューは固定しないようにしています。


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