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200年後のカフェとは.....?

昨年の11月29日、九鬼の網干場で行われた、書籍『二弐に2』(らくだ舎帆版室)の出版記念トークイベントに行きました。

登壇者は『らくだ舎』の千葉貴子・千葉智史夫妻(←『二弐に2』の製作者)と『トンガ坂文庫』の本澤結香さんと豊田宙也くんの4人。

書籍を読んだ感想も含めてちょっと色々と書きたいことがありますが、とりあえずこのトークイベントで個人的に思ったことを書きたいと思う。
(書籍そのものの感想はまた後日にでも)

『二弐に2』は、千葉夫妻が出版にあたり『200年後』をテーマにした内容にで(つまり本を企画した2022年の200年後、2222年ということ)色々な方に執筆を依頼している、いわゆるアンソロジー。(千葉さんは「アンソロジーを作ろうと思って作ったつもりはないけど、形式的には(ジャンル的には)アンソロジーになった」とのこと)

出版記念トークイベントでは、この書籍が『どうやって出来上がっていったのか』という、具体的な『作業』や『行程』の話をされていました。
(印刷にこだわりを持つ藤原印刷とのやりとりがとても興味深かったです。)

『二弐に2』に執筆してくれている執筆陣に、どうやって文章の執筆を依頼したのか、そしてどういう人選だったのか、という質問が宙也くんからあり、それに千葉夫妻が答えていました。

ざっくりと、

「以前から面識があり、執筆をお願いしたら書いてくれた」
「以前から面識があり、執筆をお願いしたが叶わなかった」
「面識がなかったが、執筆をお願いしたら書いてくれた」
「面識がなく、執筆をお願いしたが叶わなかった」

と説明していました。

執筆をお願いしたい人には、千葉夫妻から『かなり熱いエモーショナルな内容の依頼文を送付した』そう。

その中でも「面識がなく、執筆をお願いしたが残念ながら実現には至らなかった」人の中で、その筆頭に

『三品輝起』(みしなてるおき)

の名前が挙げられたことに、個人的にはひっくり返りそうになりました。

三品輝起氏は東京の西荻窪で『FALL』という雑貨屋さんを営んでおり、その傍ら、執筆活動もされている方。

実はここ数年(5〜6年)の間に『自分の仕事に関連する、最も面白かった本を1冊挙げよ』と言われたら、間違いなく三品輝起氏が書かれた『すべての雑貨』という本を選美ます。
(ついでに言うと、「お店を始めてから20年間の間に読んだ漫画の中で、自分の仕事に関することで思想的に最も影響を受けた作品を挙げよ」と言われたら山田芳裕さんの『へうげもの』を挙げます。)

三品氏の著作『すべての雑貨』『雑貨の終わり』

三品輝起氏の著作『すべての雑貨』は2017年の出版だが、変な話2017年にこの本を読んでなかったら、今のカフェスケールはなかったかもしれないし、コロナを乗り越えられなかったかもしれないし、コロナの後に訪れる世界での『カフェの在り方』をうまく想像できずに挫折していたかもしれません。

自分にとってはそれくらいに重要な書籍です。

実はこのnoteでも過去に触れていますが、カフェスケールの名前でnoteを書こうと思ったのは、『すべての雑貨』という本を自分なりに解体して、解釈して、そしてそこに書かれている内容をカフェの思想として再解釈・再構築するために書き記すためです。

カフェとは何か。

カフェは今後どうなっていくのか。

そういうことを考えるにあたり、そのきっかけになった書籍が『すべての雑貨』です。

三品氏の文章は実にユーモラスで面白く、そして雑貨についての考察が素晴らしく、読んでいて『面白い!』と思うと同時に『悔しい!』という思いも湧いてきます。

なぜこのことを僕は自分の頭で考えられなかったのか、なぜこのことを自分の言葉で文章化できなかったのか....そういう悔しい思いが原動力となってスケールのnoteを始めました。

三品氏が自身の著作の中で『雑貨化していく世界』『雑貨国の侵略』という独自のワードを使って、雑貨業界と雑貨業界の未来のことを、あるいは『消費社会の本質と正体』『消費社会の未来』のことについて、『雑貨』というものを通して書いていて、そして、その『雑貨』の部分をそのまま『カフェ』、に置き換えたら、それはそのままカフェ業界にいずれ訪れる『カフェの未来』を暗示するにぴったりの内容のように感じました。
(または『カフェの本質とその正体』について)

『カフェ』と『雑貨』はとても親和性の高い分野だと思っていて、三品氏が書いている『雑貨』はすべて『カフェ』の変換しても、そのまま意味が通ってしまう、と考えています。

つまり『(カフェという業界において)薄々そう感じていたけどうまく言語化・物語化できなかったこと』を、三品氏は、雑貨屋店主の目を通して鮮やかに軽やかに言語化・物語化してしまった、ということ。

これは本当に自分にとっては大事件でした。

この内容....本当は僕が言語化してみたかった....僕が言語化するべき内容だった.....と、作家でもなんでもないただの茶坊主の僕が勝手に悔しがって身悶えしていました。
(言い添えると、三品氏という人もまた、『作家でもなんでもないただの雑貨屋店主』。そんな雑貨屋店主ががある日、雑貨業界におけるとんでもなく重要な文章を世に出してしまいました)

しかし、悔しく思うと同時に、こんなに鮮やかにクリアカットに文章化できる雑貨屋店主がいることにとても嬉しくなってしまったことも事実で..... 実はこの三品氏という人は、僕と生まれた年が同じである、ということも自分にとっては大きく関係しているのだけど......三品輝起と言う人が、雑貨屋の目を通して書ききった雑貨のことを、僕は僕でカフェ店主の目を通してカフェのことを書ききってやろう、と思い、コロナ禍真っ最中の中、noteを始めました。

noteをコロナ禍で始めたというタイミングにも、自分には大きな意味があったと思います。

書き始めたきっかけは三品氏に触発されてのことですが、自分の中の裏のテーマとして『不要不急という言葉が飛び交う中で、今後もカフェを続けいくために、カフェの現在地とこれからの未来を言語化し、思想的な強さを手に入れる』必要がありました。

noteを書き始めてからnoteの中で、三品氏が書いていたことにカフェの店主として言及するまでに、さらに1年を要したが、なんとか自分の考えていたことを(文章表現としては三品氏に遠く及ばずですが)一定まで書き切ったように思います。
(一応まだ現在進行中なのですが)

三品氏という人に憧れすぎて、悔しすぎて、そして自分と同い年でそんな人がいるのが嬉しすぎて、自分は自分で、カフェの業界の隅っこで、カフェについて思想を巡らしているんだぞ、という思いを届けたくてnoteを書いています。
(心のどこかでは、自分が書いた文章が本人に届いて欲しい、と思っている。あわよくば。)

だから『二弐に2』を作った千葉夫妻が、三品氏に、自分が出版するアンソロジーに執筆してもらいたいと思っていた、ということを知った時は、とても嬉しかったし、イベントに参加してよかったと思いました。

それと、この書籍にはQRコードがついていて、『sound clowd』に飛ぶようになっていて、『しいねはるか』さんという音楽家の音楽が聞けるようになっています。

しいねはるかさんが作曲した曲は、『二弐に2』のために作った曲だそうで、確かに『二弐に2』を読みながらしいねさんの曲を聞くと、とてもいい感じです。

というか『この本はこの音楽を聴きながらお読みください』って意外にこれまでなかったかも?と思いました。

少し内容に触れますが、著者の1人である千葉智史さんは冒頭の方で、自身で体験した貧困者を救済するボランティアに参加された体験のことを書かれています。

その内容がとてもよかった。

実は僕も20代の頃にずっと『貧困』のことが気になって、関連書籍を読み漁った時期があります。

貧困とは何か?

どうすれば貧困から脱することができるのか。

どうすれば貧困に陥らずに済むのか。

そもそも貧困とは何か?(冒頭に戻る)

をずっと考えてた時期があります。

三品氏に執筆を依頼していたことといい、貧困に関することを書かれていたり、かなりシンパシーの感じる内容でした。

イベント終了後、千葉貴子さんと少しだけお話しさせていただきましたが、「これらかも作り続けると思うし、その過程でまた三品さんに執筆をお願いすることもあります。まだ諦めてません」とおっしゃっていました。

僕もいつか、三品氏とお会いできる日がくるよう、その日が来てもちゃんと自分のカフェに対する持論を展開できるよう、思想的な訓練を積み重ねていきたいと思います。

ちなみに、三品氏は自身の著書の中で『本の在り方』もまた、『雑貨化』していく、ということを書かれています。

『二弐に2』の製作者である千葉夫妻も三品氏に執筆の依頼をしていた、ということは、千葉夫妻は三品氏が思う200年後の本の未来について言及して欲しかったのかもしれません。

僕も聞いてみたいです。

カフェの200年後の在り方について。

そして僕も千葉夫妻もきっと、三品氏の世界を通して知りたいのは、カフェや本についての200年後は、

『その姿形や取り入れ方は違っていても、その行為の本質は変わっていない』

ということ、あるいはそういう願望なのではないかと思う。

そうでないと人間の人間らしさが失われてしまう、と思う。

何百年、何千年経っても、相変わらず戦争はなくならないし、疫病や貧困もなくならない。

それと同じように人間の営みの本質も変わっていないのだろう、と思う。


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