もっとも大事なこと
このノートは日記だ。久しぶりに書いた日記のようなものだ。
そしてこのノートは、独りよがりなただの叫びだ。
白紙の上というのは、まるで暗い闇の世界の中にたった一人放り出された、この地球という世界の、日常世界の延長線上とはほど遠い、どこか遠くの異世界のようだなと思う。
私はパソコンの前でたった一人きり、誰も見ていない舞台の上で踊り続けるピエロのようであり、あるいは誰もいなくなった廃墟をさまようたった一人の瀕死の兵士だったり、またある夜は、私は一人の少女となって暗い新雪の雪原を歩き続ける。
方位磁石は手作りの壊れた品。針なし。腕時計は腕の上に自分で勝手に書き記したこどもの落書き、のようなもの。
最初のころはごっこ遊びも楽しかったけれど、年をとるごとにその楽しさは消え失せて、ただただ苦痛と、漫然と流れ続ける時の流れに身を委ね続けてきた徒労感と、満たされることのな焦り、不安、焦燥感、さみしさもある。
それらが足跡となり、影となり、私の後ろを静かに着いてくる。
救いのない物語だ。もしもこれが戯曲ならこんななんてひどいストーリーだろうとか、もう何十年も前にはやった歌のフレーズが頭の中をこだまする。
私の頭の中は古い。この手のひらに落ちてくる雪の景色も、太陽を遮るこの夜も、ひえた指先を切るようにむしばむこの氷の鋭さも、すべては幻影、過去の私が本当に歩いてきたあの頃の世界そのもの。
時はたち、私は置いて行かれている。その実感はある物の、私は時代に追いつけていない。
ただただ、他の人たちが歩き通り過ぎていくのを、見ているだけ。
たったひとり、私だけしかいない夜の戦争。戦争の、ようなもの。
独りよがりの戦い。
ビールを飲んで、ひえた心を温める。メリークリスマス。
おめでとう、世界に生まれてきた私。
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