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第17回 北條元康 「創造力の鍛え方」

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 2019年、北條工務店隣の廃工場を手に入れ、公共のイベントの会場や、イベント備品の制作場として活用した。また私自身も、地方でのイベントや、制作に関わる事が年々多くなり、忙しい日々を過ごして来た。しかし、今回のCOVID-19の影響で、殆どのイベントが中止になり、隣の工場は使用予定が無くなり、私も少し時間的余裕ができた。

 都々逸で、『大工殺すに、刃物はいらぬ、雨の三日も降れば良い』とある。一般的に、『大工(職人)は蓄えも少なく、日銭が入らないと生活が儘ならない』と言われているが、私はそうは思わない。昔の大工は勤勉で、雨の日(現場作業ができない時)などは、道具の手入をしたり、端材で役に立つ小物(踏み台等)を制作していた。制作物は、お得意様に届けたり、販売もしていた。「三日も、モノ作りが出来なければ、死んでしまう」という意味では、正しいのかもしれない。

 という事で、今回余裕のできた私は、また何か作ろうと思っていた。専門家は、コロナヴィールスには、アルコール除菌が有効だと言っていて、手押しポンプを足踏み式に工作している人が何組かいるのをWEBで観て、とても面白かった。手押しポンプは、簡単な機構で制作できるが、品薄で手に入らず、手元に有るのは、
握るタイプのスプレーボトルだけ。
 「このスプレーで、何とか足踏み式を作れないかな?」
 この一言で、制作が始まった。
 まず、スプレーボトルを使いやすい位置に固定して、そこから、足踏みのペダルまで、シャフトやカムで繋いでいく。色々苦労も有ったが、数時間で完成した。
 自宅マンションのエントランスに設置すると、子供達が喜んで踏んでいく。
 Facebookに掲載したところ好評で、幾つかの店舗で使いたいとのお話をいただいたので、量産をすることになった。しかし、量産品を他人に手渡すモノは、壊れにくて、使いやすく作らなくてはならない。今回の機構は、「シンプルなカラクリ」なので、細部の改良をする事で対応ができた。
 最初に馴染みの喫茶店に設置して、耐久試験を行い、改良した「先行量産品」を制作して、イベント会場や店舗に納品した。今後は、正式販売に向けて、改良を重ねて、実用新案の提出も考えている。

 以前の東日本大震災の時もそうだったが、社会が大きく変化する中で生きていくには、心に余裕を持ち、創造力豊かに振舞う事が大切だと実感できた。
 これは、多くの人はできない事だが、現代美術の作家たちは、自然に行なっている。
 私自身も、現代美術作家達に触れ合う事で、この力を身に着ける事が出来たのではないかと思う。この力を使えば、今後多様な変化に対応する事ができると確信している。

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北條 元康
東京都墨田区向島で工務店を経営
幼少の頃より職人に囲まれて育ち、モノ作りが好きになり、自身も大工として施工を熟す。
2001年頃より、向島でのアーティスト活動に従事し、以後アート制作の為各地を巡る。
2011年次世代の工務店のあり方を模索する為に、BUGHAUSUを立ち上げる。
2019年より、工務店の隣の廃工場を利用し、イベントや制作物を作る。

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