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第11回 EAT&ART TARO 「どんな時だって、新しいものを見たい」

 食とアートについて活動している美術家です。もともと飲食の世界から来て、今のような活動をしている変わり種です。僕は飲食店をイメージして参加型の作品を制作することが多く、それは一見普通の飲食店のようだけど、実社会では運営できないお店のような作品を作ることが多いです。

 コロナによっていろいろな業種に影響が出ていますが、あたらめて街にある個人経営の飲食店は、社会的に弱い立場にあるなと思いました。アーティストも弱いけど、、、
 僕は常々、地域の文化を作るのは個人経営の飲食店だと思っているんですが、うちの近所でも面白いお菓子屋が一軒できたことによって、地域が盛り上がり飲食店が増えて、街の雰囲気が変わっていくのを感じたことがあります。地域の文化、カラーは飲食店が支えていると昔から思っていました。
 僕の仕事は、いわゆる地域アートと呼ばれるような現場のプロジェクトが多いのですが、地方のアートイベントを通して僕ができることは土壌作りだと思っていて、面白い個人経営者がやってこれる、受け入れられる土地を耕すような作業だと思っています。
 実際に街の文化を築いていくのは、そこに住んでお店をやる人だとずっと思っています。また、僕は個人店が何より好きなんです。
 もちろん国の文化の象徴としての「和食」とか、和牛とかも大事だとは思うけど、インディペンデントな個人店は、食と街の文化を作ってる最前線って感じがするんですよね。

 今回のコロナでそういう個人店が消えてしまうのは本当に痛い。規模が小さいとちょっとしたことで潰れてしまうし。そうじゃなくても10年続く飲食店は1割以下と言われています。補助金が出ても都市部のお店は家賃を払うだけで終わってしまいそうだし。
 そもそも個人の飲食店ってリスクが大きすぎると思っていて、店主一個人の努力とか苦労に支えられていて、もっといい仕組みはないかとずっと考えているんですけどね。

 でもこんな状況だからこそ、面白い飲食店や全く新しい発想の食のビジネスをする人が出てくることを期待してしまうんです。僕は楽観的なので。
 既存の飲食店は密集しているところが多いし、みんなでワイワイと食べるのは楽しんだけど“美味しい”なんて感覚は絶対的なものじゃなくて、時代が変われば変化するものだと思っているし、普遍的なものでもない。密集しなくても良い新しいお店というか、楽しみ方が出てきて欲しい。最近はWEBを使った飲み会もあるけど、もっと革新的なもの。
 全く新しい楽しみ方を提供する飲食店が出てきて、その人がアートから何かきっかけを得ていたら、こういう仕事をやっててよかったなと思えるんだけどな。

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EAT&ART TARO                              調理師学校卒業後、飲食店勤務、ギャラリーや美術館などでケータリングなどを経て、食をテーマにした作品を作る。これまでに、自分で購入したものが次の人のものになってしまう、おごることしかできないお店「おごりカフェ」や、瀬戸内海の島々で作った「島スープ」など食をテーマにしたものを多数発表している。
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭などに参加。

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