CAEエンジニアは設計者CAEを推進する必要があるのか

設計者にCAE教育を行い設計者自身がCAEを出来るようにすることや、簡単な解析は設計者自身に行ってもらい解析専任者は複雑な非線形解析をするために設計者をわざわざ教育する必要があるのか?

私は設計者CAE の推進には反対の立場である。むしろ設計者は本来の設計業務に注力し、簡単な解析であっても解析専任者がするべきであるという立場だ。設計者CAE 教育にかける時間をむしろ設計者と解析者のコミュニケーション力向上に注力すべきである。
その理由は明確で、設計者CAE の推進は、解析ベンダーが解析ソフトを売るための戦略だということだから。設計者の意図をきちんと汲めない解析者の意識改革やコミュニケーション向上のコストを払うくらいなら設計者自身がCAE を出来るようにする方が楽だということだからである。これらは問題の本質に蓋をしあたかも設計者ができるようにした方が解析者も下請的解析依頼をする必要がないというもっともらしい口実である。もちろんスーパー設計者がいて、設計も解析もすべて一人でこなせるに越したことはないが、設計も解析もそれぞれ専門特化した領域の中でそのすべてを一人で行うことは現実的ではないと思う。

別の記事でも書いたが、解析専任者は設計者からの興味本位の解析依頼をこなしてこそ真の課題にたどり着けると考えている。そのためにも設計者が中途半端に解析をするのではなく、専任者がきちんと設計者とコミュニケーションをとり課題に対応していくことこそが、モノづくりにつながる解析になると考える。

初期値、境界値を与えれば何か結果が出てそれが何となく正しそうだからとそのまま設計に反映されてしまうことこそが恐ろしい。それはまさに、アクセルを踏めば自動車は180キロ出せるから高速道路で180キロ出すようなものでたまたま警察に見つからなかったから目的地に早く着けたというようなものである。警察に捕まらなければ何してもよいわけではない。無知を無知なまま、設計者が中途半端にCAEを行うことで、結果たまたま何も問題が起きなければよい、ということであれば解析専任者はそのメーカーにとって不要な存在であろう。しかし、「使えるから使う」、というのではなく「正しく使う」ということに意識がなければ無知の不正が蔓延することになる。何か問題が起こったときは、無知でしたでは済まされない。


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