CAEエンジニアはオープンCAEを使うか商用ソフトを使うか

オープンCAE界隈ではよく話題にあがることであるが、メーカーでCAEを専任としている私からすると、仕事ではオープンCAEを使うことはない。決して使うことはないということではないが、選択肢としてまずは商用ソフトでありオープンCAEは商用ソフトであれこれ手を尽くしてどうにもならない場合の最終手段でしかない。
その理由は下記の通り。ちなみに下記の見解はあくまでも私個人の意見でありオープンCAEを否定するものではない。

圧倒的にコストパフォーマンスが良い

ソフトウェア導入という観点だけで言えば購入費用の掛からないオープンCAEに分がある。しかしながら商用ソフトはインストールから運用、教育や利用時の不明点など、何か問題があればすぐにサポートに問い合わせればたいていのことは解決することができる。オープンCAEであれば何か問題があればすべて自分で調べてひとつづつ解決しなければならない。ここに圧倒的な時間というコストがかかる。また、ルーチンワーク解析のためのツール化、設計者用の解析ツール化をすることで大量のジョブを流すことでオープンCAEにメリットがあるようにも思われるが、これまでの私の経験からは、ツール化するための開発期間は商用ソフトのほうが圧倒的に短縮できるし、ツール化した後の解析安定性の面でも商用ソフトであればエラーが少ないし、メンテナンスも楽である。結局のところ、商用ソフトは導入や継続保守に費用が掛かったとしても圧倒的に時間というコストが削減できる。そのため、人件費をコストとして考えていない会社でない限り、圧倒的に商用ソフトに分があるしコストパフォーマンスが良いと思う。
当然ながらオープンCAEを商用ソフト同様に扱える人であれば開発費用は同じかもしれないが、オープンCAEを商用ソフト同様に扱えるようになるまでの教育コストがかかることになる。また、人件費をコストとしてみることなく開発スピードも求められることなく、永遠に開発時間をもらえるような会社はオープンCAEのほうが良いかもしれない。ただ、そのような会社はそもそもCAEに投資する気がないのではないかと思う。

経営者に対する説明責任を果たすべき

メーカーでCAEエンジニアとして仕事をしているのであれば、その効果をきちんと経営者に対して説明する必要がある。その際に上記の時間コストを考慮すれば商用ソフトのコストなどたかが知れているし、CAEを使ってメーカーのQCD改善に寄与しているのであれば商用ソフトの費用など簡単に回収できる金額である。
たまにメーカーのCAE専任者で上司や管理者、経営者が不理解で解析に投資してくれないから自分でオープンCAEを勉強して会社で使っているという人がいる。私からすればナンセンスであり、CAEエンジニアとしての説明責任から逃げているだけと言わざるを得ない。仕事として会社がその人にCAE専任職として役割を与えているのであれば、説明責任と結果責任を果たす義務がある。にも関わらず、会社に対して説明責任を果たさずCAEを使って利益も出さずCAEの技術的な屁理屈をこねているだけでは、会社からしたらそれはただの面倒な社員でしかなく窓際に追いやられるのが関の山だろう。それで会社がCAEに対する理解がないと嘆いても責任を果たしていない以上いくらオープンCAEを頑張ったところで状況は変わらないだろう。

CAE業界の発展には適切なベンダーとユーザーの関係が必要

ユーザーが増えれば(商用ソフトが売れれば)それだけ商用ソフトの開発費用が賄えることにもなるし優秀なサポートも受けられるようになる。ベンダー側に様々な問題が集約されればそれによりサポートの質も上がっていく。それが回りまわってビジネスとしての良い循環になると思っている。

なぜオープンCAEを使うのか


わたし自身はプライベートで勉強のためにオープンCAEを使っている。それは私にとっては仕事の中だけでは手足のごとくCAE ソフトを使いこなせるようになるための時間が圧倒的に足りないし、商用ソフトはブラックボックスでありその中身に触れることが難しいため、オープンCAEを通して商用ソフトを理解している。そして何よりもプロフェッショナルとして日々トレーニングをすることがプロフェッショナルとしてのスキルを維持するために必要であると考えているからである。これは基礎体力を維持するための日々の体力トレーニングに近いと思う。

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