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#青空ノート ノートと鉛筆

ふわり舞う髪と春の日差し、ぽかぽかと暖かい午後。

もうすぐ梅雨に入るのかなー 台風で休校になるだろうか?

目の前の緑と白のせめぎあいがどんどん白色優勢になっていく。


眠い。


授業中だから寝たらダメだけど、眠い。まばたきしようとしたら下に降りた上瞼が上に戻るのを拒否してくる始末。下瞼に糊でも塗られたのか。開かないんだったらまあこのままでいいよね……


いけないいけない、危うく寝落ちするところだった。瞼が開かない。こじ開けるか。

そもそもお昼ご飯の後は眠たくなるように人間出来ているのに、寝ないでいるなんて無理だよねー。睡眠はすべての頂点に睡眠。3限の化学の実験面白かったなぁ。特にフラスコに一滴ずつ睡眠を垂らすと特定の睡眠で睡眠が睡眠くなるのとか睡眠……


眠い。


でもここで寝るわけにはいかないしなぁ。そうだ、絵を描こう。モチーフは何がいいかな、青い髪の女の子がいいかな。場所は…教室にしよう。教室の対角線上、冬になったらストーブがおいてある、左の前の方。机にもたれかかってる感じ。外は、ポカポカ陽気。楽しそうな絵。

流石に授業ノートに描くのは気が引けるので、絵を描く専用のノートを持っている。もっとも、絵がうまいわけでもない。

このノートには絵のほかにも、学園祭の実行委員の決め事の草案とか、作る動画の絵コンテもどきとか、何やらいろいろ書いてある。授業用ノートを忘れた時のピンチヒッターであり、時間割を書き写すメモ帳でもあり、まさに「何でもあり」のノートだ。安物なのにさんざん持ち運ばれて背表紙が崩壊したのでテープで止めてある。

字を書くならシャープペンシルが使いやすいけれど、絵を描くなら鉛筆のほうが何となく心地いい。筆圧が強すぎるのは直したけどシャープペンは消した跡が残りがちなので鉛筆のほうがいい。濃さはHB。三菱。

特に構成も決めずに適当に描いていく。まあ一発で描けるほど器用でもないのでボールペンを入れるならちゃんと下書きをした後。その下書きも、描いては消して、消したら描いての繰り返し。消しゴムは消し心地の良いやつならまああんまりこだわりはない。MONOは柄が好き。

やっぱやめた。立ち絵にしよう。服は――うちの制服でいいかな。ブレザーとリボンはたぶんこんな感じ。せっかくなら眼鏡もかけてもらおう。黒髪にした方が似合いそうだな。手はたぶんこんな感じ。スカート以外と書きにくい。襟は立てる。目はバランスが大事。耳。鼻。口。首。髪。Yシャツ。太ももと膝。ふくらはぎ。靴下。靴。

頬っぺた。

虹彩。


出来た。授業中、15分で描いたにしてはなかなかの出来だと思う。でもとても上手か?と言われてもたぶんそうではない。自分よりよっぽどうまい人がこの教室には何人もいる。

だけどそんなことは関係ないんだ。この子は私が描いたんだ。そのことを他の誰にも否定させない。この子は私だけのものだし、私はこの子の為のもの。


せっかくだし色も付けてみようか。色鉛筆はいつも持ち歩いている。


♪~


あ。いけない。授業中だった。板書取れてない……

ま、いっか。


よくないです。はい。

そんなことをチャイムが鳴るまでしたりしていなかったり。

ある高校生の春の日のこと。


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