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〝想い〟から始まる思考法

訳書紹介、第7弾(noteでは第3弾)は、

エイミー・ウィテカー著
『アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術』


になります。

アート思考については、まえがきを書いてくださった山口周さんの著作を始め、たくさんの良書がありますね✨

そんな中で、本書独自の特色を挙げるなら、

①外国と日本の「アート思考型ビジネスの実例」を豊富に紹介
②「アート思考をビジネスに取り入れる具体的な方法」を提案

の2点でしょうか。

つまり、かなり「実践重視」のアート思考本ということになります。


訳してみて最初に思ったのは、なるほど、アート思考というのは、

〝想い〟を形にすること

なんだなということです。なんかのコピーみたいですが。


それまで「起業家」というのは「起業」が目的なのかと漠然と思っていましたが、

アート思考における「起業」とは「想い」を実現するための「手段」である

ということがわかりました。


たとえば、

バルーン・カテーテルという医療器具を発明した心臓血管外科医のトーマス・フォガティ氏の場合。

フォガティ氏は、家庭の事情で幼い頃から家計を支え、15歳のときには手術技師として働くようになりました。

(父親のような存在の上司)クランリー医師の担当する手術に、血栓除去手術があった。動脈の閉塞した部分にメスを入れ、血管を開いてから血栓を回収するという大手術だ。術後に死亡する患者や四肢の切断を余儀なくされる患者もいた。治癒した患者でも、その多くは胸や脚に長い傷痕が残った。「外科医たちは八時間もかけて手術をした。その翌日か二日後には、同じ患者がまた手術室に戻ってきて、両脚を切断された。そういうことを何度も見ていたら、〝これよりマシな方法があるはずだ〟と言いたくもなる

「これよりマシな方法があるはずだ」という想いを起点に、フォガティ氏は試行錯誤を重ね、「実用化以来、2000万もの命と四肢を救った医療器具」を発明しました。



また、バーン社のピーター・スコット氏は、ケニアでは木材や木炭を使った調理用コンロが使用されており、「一酸化炭素中毒など室内空気汚染による死亡者数が年間約430万人にものぼる」ことを知ってショックを受けます。

そして「ケニアの人々を救う商品を作りたい」という想いを抱き、なんとその25年後に

「木炭消費量が半分で済むコンロ(モノ)」「ケニアの一般家庭でも無理なく購入できる価格とローン制度(モノを買える環境)」

の両方を創造して販売にこぎつけたのです。


そういう強い想いのことを、著者はアーティストの前進を促す「灯台の問い」と呼び、大きくわけて2種類の問いがあると説きます。

「それって本当に不可能なのか?」
「こんなことができたらクールじゃない?」


フォガティ氏の問いは前者、スコット氏の問いは後者ということですね。


著者のエイミー・ウィテカー氏は、美術学修士号(MFA)と経営学修士号(MBA)の両方を持ち、アートとビジネスの橋渡しを目指す人物。表現もかな~り独特で、訳者泣かせでした😅

本書は、簡潔でわかりやすいマニュアル本とは対極に位置する、一風変わったビジネス書ではないか思います。


「アート思考を実践する」ことは、「舗装された一本道を歩くこと」とは真逆のことだからです。

ちょうど映画『フィールド・オブ・ドリームス』のこのコーン畑のような、自分の背丈をゆうに超える高さの「草むら」の中を手さぐりで歩くこと。

「灯台の問いの光=強い想い」だけを頼りに、先の見えない、つらく、苦しい道のりを孤独に進むこと。

その道行きを経てはじめて、「0から1を生みだす」ことができる。


・「草むら」を歩くとき、どんなことを心掛ければいいのか?
・企業内でアート思考を実践するとき、「草むら」を進むアーティスト(社員)のために、マネジャーはどんな「環境」を整えたらいいのか?
・クリエイターが作品を商品にするとき、どんなことに注意すればいいのか?

まるで「雑多なおもちゃ箱」のように、本書にはアート思考実践のための「ヒント」がたくさん散りばめられています。

山口周さんのすばらしいまえがき、アート思考の「日本の牽引者」7名の方々の示唆に富んだインタビューも付いた、盛りだくさんな内容となっております。

他の良書にて「アート思考とは何か?」というコンセプトを理解された方の、「2冊目の実践編」としてもオススメです。

また、ビジネスパーソンだけでなく、クリエイターの方々にも、お手に取っていただけたら嬉しいです💖

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