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ピエロとクジラ

『15時17分、パリ行き』で止まっていた訳書紹介。noteで再開しようかと思っていたところ、ちょうど次の『短編画廊 絵から生まれた17の物語』の文庫が発売されることになりました✨✨ これを機により多くのみなさんに読んでいただけたら嬉しいです。


わたしが担当したのは、「宵の蒼」(ロバート・オレン・バトラー著)と「アダムズ牧師とクジラ」(クレイグ・ファーガソン著)の二篇です。

ある日の夕刻、師匠から弟子チームに声がかかり、先着順で好きな話を選ぶという形式で担当を決めました。さっそく原書の『IN SUNLIGHT OR IN SHADOW 』を読みはじめたんですが、いつものように早々に寝てしまい、朝起きたら、もう四篇が決まっていたという…。みんな読むの早い!!


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「宵の蒼」は、ピエロがほかの人に混じって平然とタバコをふかしてる絵がおもしろいなと思って選びました。話もシュールで好みだったし。

でも訳すのは、ほんとに難しかったです。「なんでこんなの選んじゃったんだ、バカバカバカバカ!」って20回くらい思いました。ピエロは(あたりまえなんですが)終始無言なんですよね。つまりパントマイムを描写せねばならず……ううう(涙) ピエロと同じ動作をしながら、うんうん唸って考えていた思い出。

あと作中に観劇の場面が出てくるのですが、実際に上演された戯曲が使われています。なので、その戯曲を読んで、作中劇の流れが当時の舞台とちがってしまわないように気をつけました(多少はアレンジされていましたけれども)。

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「宵の蒼」は、絵画と同じ1914年を舞台にし、当時の実在の人物を登場させ、実在の演劇を作中に組み入れた、隅々までこだわりの感じられる意欲的な作品です。これはできるかぎり忠実に訳さないと著者に申し訳が立たないと思ってがんばりました……。

ぜひ、ホッパーの絵から生まれた幻想的な物語をお楽しみください。



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「アダムズ牧師とクジラ」のほうは、どことなくコミカルなところもあって、独特な雰囲気がおもしろいと思って選びました。著者がコメディアンということもあってか、語り口がひょうひょうとしているのが好みでした。あと、できれば二作とも男性が主人公の作品を訳したいと思ったのもありました。

こちらは、大麻の呼び名に対する並々ならぬこだわりを感じました。全部ぶち込んでやるぞーっというような(笑) なので全部訳出しようと思って、ルビをたくさん振りました。大麻のこともたくさん調べたので、検索履歴が怪しい人になりました。

このお話は訳してて楽しかったです。コミカルなところもありつつ、深いテーマを扱った、スルメのように味のある作品でもあります。楽しく読んでいただけたら嬉しいです。

ほんとはこの作品、自分では勝手に「〇〇〇〇ー」と呼んでいたんですが、ネタバレになるので、noteのタイトルは「クジラ」にしておきますw


第二弾『短編回廊 アートから生まれた17の物語』も近日発売になるそうです。今度はさまざまな画家の絵から生まれた物語だそうです。こちらもぜひお楽しみに!

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