ジャニーズ事務所の性加害事件について

いま世の中を大きく騒がせている故ジャニー喜多川氏の性加害事件について、櫻井翔がキャスターを務めるnews zeroでこの問題をどのように報道するか興味があった。当日、放送を見ることが出来なかったのだが、後にYahoo Newsに掲載された 「櫻井翔はコメントを控える」 との記事を見つけ、ああやっぱりな、と思った。しかし、有働キャスターがこの話題を切り出す前に、「この件については番組で話し合って私が話します」 と述べたそうだ。今回の放送は見られなかったけど、今までこの番組を見ていて、有働さんの語り口調は、ニュースに真摯に向き合い、正義感がとても強そうに見える。きっとこの件に関しても、いろいろ個人的な意見はあると思う。しかし企業で働いたことがあれば誰でも経験があると思うけど、企業を代表して発言する場合、当たり前だけど、個人の意見など言えない場合が多い。番組内でニュース(事件)に関しての意見とあれば尚更だ。だからきっと冒頭のコメントのように(わたしは個人的に言いたいことはありますが)と心の中でかっこ書きで蓋をして、「番組で話し合った」、とわざわざ注釈のように添えたのだと思う。つまり 『皆さんが求めていることは分かっています。だけど、事務所の意向を無視することは出来ません。当番組との関係もあります。それに、今までわたし達テレビ業界はどれだけ彼らから恩恵を受けてきたか。そしてこれからも友好な関係を保つためにも、罪を犯したからといって、批判するわけにはいかないのです。彼らに対して後ろ脚で砂をかけるようなことは出来ないのです。だけど世間にはそんなこと関係ないことは知っています。真実を話さなければいけない立場だと分かっています。だから櫻井くんを含め番組スタッフとも話しました。結論は、世間からどんなに批判を浴びようと、事務所に対して不義理を働くわけにはいきません、忖度することにしました。わたしが矢面に立ちますので、どうかご理解ください』。冒頭のコメントからは、そんなメッセージが受け取れた。

今回の性加害問題は根深いなんでもんじゃない。芸能界一の闇の深い問題ではなかろうか。今まで薄々みんな知っていたけど、声に出せない。事務所を退所したアイドルが時たま声を上げるがたいていは黙殺される。どんな企業にも業界にもタブーや機密事項はあるし、墓場まで持っていかなければならない話はあるだろう。芸能界に関して言えば、そんな問題だらけかもしれない。私利私欲に塗れ、権力争い派閥争い当たり前の嫉妬渦巻く世界。人間の負の部分を寄せ集めたような世界で常識、モラル、良心など通用するわけがない。そんな世界で最も権力、影響力をもったジャニーズ事務所の亡くなったとは言え元トップの人が犯した罪は、例え(は悪いが)、人を殺めたとしても、マスコミ・テレビ関係者は黙認してしまうのではないか、というくらい盾突くことができない相手(事務所)なんでしょう。それでも昨今の騒ぎを鑑みて、報道しないわけにはいかない、どうやって報道したらいいだろう、いろんな思いが逡巡して、あの冒頭のコメントから始まって、結局一般論で片づける(報道する)ことがいまテレビ各局が出来る精一杯のことなんだと思う。

そして放送後、Yahooの当該記事へのコメントは案の定であった。しかし、わたしを含めた批判的な人たちはどのような結果になれば満足するのだろうか。現在の社長が、「はい、喜多川は大抵のアイドルには手を出していました。元SMAPのメンバーも嵐のメンバーもみんな被害者です。でも彼らは売れたいために我慢しました。でも人道的に許されることではありませんよね。ごめんなさい、もう二度と起こらないようにします」 とでもいえばわたしを含め批判的な大衆は納得・満足するのだろうか。それともジャニーズ事務所の永久消滅を望んでいるのだろうか。

マスコミ・テレビ業界と芸能事務所は所詮利害関係のみで成り立っている。しかしマスコミ・テレビ業界のなかにも真摯なジャーナリストは存在する。そんな人たちを含めた業界人と芸能事務所。正義と私利私欲の狭間で今後この問題はどのように進展して、どのように解決するのだろうか。この問題の行きつく先がとても興味深い。

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