明日の私は今日よりずっと上手にできる

今日、生まれてはじめて、台所の換気扇の掃除をした。

水あめのようにこびりついた、あぶらのかたまりを、少しずつ少しずつこすり落としながら思う。なんで私は換気扇の掃除をしているんだろう。

フードを外し、ほこりをまとったあぶら汚れをウェットティッシュでこそげ取る。手ずから外したシロッコファンを洗剤液にひたし、スポンジでみがく。
最初にふれたときの、ネトっとしたいやな感じが、徐々にゆるんでサラサラになっていく。ぴかぴかと、本来の輝きをとりもどしていく様子を見て気づいた。

ああ、これは、私がやりたかったことなのだ。

「いやだな、汚いな」と思いながら、薄汚れた換気扇を見て見ぬふりをしていた毎日を思い出す。「やりたくないけど、やらなきゃいけないな」と思い込んでいた、昨日までの私を。

私は、自分の手で磨きたかったんだ。挑戦したかったんだ。

「やりたくないけど、やらなきゃいけない」と思い込んでたけど、「やりたかったことが、ようやくできた」ことだったんだ。

思いつきのように、スポンジと洗剤とウェットティッシュだけではじめた掃除。それでも輝きはとりもどせた。
しつこいあぶら汚れはとりきれなかったけど、またこんど挑戦すればいい。何が足りなくて何を用意したらいいのかは、今日知ることができたから。

今日だけですべてやれなくていい。明日があるから。明日の私は今日よりずっと、上手に掃除ができるだろう。

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