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#48 就業規則にあると役に立つ規則②

今日は「就業規則にあると役に立つ規則」の2回目です。
①つ目はこちら。

今回も重要な規則が目白押しです。
兎に角「自社に適切な規則を入れる」が鉄則です。

第43条 休暇等の賃金

モデル就業規則にある通り、次の休暇や休業が規則にある場合は、休暇等を取得したときに賃金を支払うか支払わないかは勿論のこと、雇用身分(社員やパートといった身分)で同じなのか異なるのかなど、必ず記載しておきましょう。

規定にないとその度に支給の有無が問われかねず、支給自体が恣意的になる可能性もあります。

  • 産前産後の休業期間

  • 育児時間

  • 生理休暇

  • 母性健康管理のための休暇

  • 育児・介護休業法に基づく育児休業期間

  • 介護休業期間

  • 看護休暇期間

  • 介護休暇期間

  • 慶弔休暇

  • 病気休暇

  • 裁判員等のための休暇期間

第44条(臨時休業の賃金)

これは所謂「休業手当」のことですが、どういった場合に「休業手当」を支給することになるのか、つまり、どういった場合が「使用者の責めに帰すべき事由」に当たるのか、予め確認しておいた方が良いです。

例えば、こんな理由が使用者の責めに帰すべき事由に当たると言われていますが、業種や職種等によっても異なる場合がありますので、注意が必要です。

  • 使用者の故意または過失による休業

  • 仕事がない、製品が売れない、資金調達が困難なことによる休業

  • 資材不足による休業

  • 作業設備、工場機械の欠陥による休業

  • 検査等で稼働停止による休業

  • 従業員不足による休業

  • 親会社、協力会社の経営不振による休業

  • 運転資金不足による休業

  • 使用者による違法な解雇、出勤停止、ロックアウトした場合

  • 燃料不足による休業

  • 仕事不足により所定日数(所定時間)働けない場合

  • 派遣先からの業務縮小要請或いは差し替え要求を受けた場合

  • 節電要請受諾による休業

  • 計画停電以外の時間帯の休業

  • 発熱等をもって使用者判断で休業させる場合

  • テレワーク等を検討しないまま休業させた場合

  • 交通機関が止まる恐れがあったため帰宅命令を出した場合

  • 通常と異なる通勤手段でなら通勤できるのに使用者の判断で通勤させなかった場合

第52条(退職)

厚労省のモデル就業規則には、次の4つが記載されています。

  1. 退職を願い出て会社が承認したとき

  2. 契約期間が満了したとき

  3. 休職期間満了日において休職事由が消滅しないとき

  4. 死亡したとき

しかし、実務ではもう1つ追加しておいた方が良いものがあります。
それは「無断欠勤等により勤務の意思を示さないまま暦日(  )日が経過したとき」というものです。(  )の日数は、その他の規定内容によって14日だったり30日だったり1ヶ月だったり、企業ごとに適切な日数を設定してください。

仮にこの項番がない場合どうなるか?

次の2つの中から選択することになります。

  1. 懲戒規定がある場合は、懲戒規定に従う

  2. 従業員が行方不明で解雇の通知が送達できない場合は、公示送達が必要となる

解雇などの懲戒規定を当てはめる場合、そのための準備を完璧に行っておかなければ「権利濫用」「不当解雇」となってしまうことがあります。

また、公示送達が有効となるにはかなり手間がかかります。
下記に公示送達の一般的な手順を書いておきます。

  1. 出勤を促す通知や解雇通知、訴訟に関する文書など、相手に送達する書類を作成する。

  2. 配達記録がつく方法で発送する。

  3. 配達記録付きの書類が戻って来たら、その住所へ行くなどして相手の所在を確認する努力を行う。相手の住所地へ行った場合は、建物や電力計、ポストの状況などを写真撮影しておく。

  4. 送達できないことが明確になった場合、公示送達を裁判所に申請する。申立書にはこれまでに送達を試みた経緯や、相手の所在が不明であることを示す証拠(住民票の調査結果など)、解雇通知等を添付する。

  5. 裁判所が申立て内容を審査し、公示送達の要件を満たしているか判断する。要件が満たされていれば、公示送達の許可が下りる。

  6. 裁判所が公示送達を許可した場合、書類の内容が裁判所の掲示板などに掲示される。この掲示を一定期間(通常2週間)行うことで、相手に送達されたとみなされる。

  7. 掲示期間が終了した後、送達が完了したものとみなされ、これにより相手が書類を実際に受け取っていない場合でも、法的には送達が成立する。

無断欠勤により公示送達を行う場合、申請にも手間と時間がかかり、最終的に解雇が成立するまで2〜3か月かかることとなるため、「無断欠勤等により勤務の意思を示さないまま暦日(  )日が経過したとき」という条文は必ず就業規則に入れておいた方が賢明です。

公示送達の詳細は裁判所のホームページに掲載されていますので、ご参考まで。

第53条(解雇)

「解雇」は、労働契約法第16条において「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と記載されており、実行する場合には細心の注意を払って行わなければなりません。

また、有期契約者をお「雇い止め」する場合にも次のような理由が原則必要となり、それが確認できない状態で雇い止めした場合は同様に権利を乱用したものとして無効となる可能性があります。

(雇い止めが有効となる場合の例)
・ 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・ 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため
・ 担当していた業務が終了・中止したため
・ 事業縮小のため
・ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

厚生労働省:モデル就業規則

普通解雇の事例として、モデル就業規則には次の記載があります。

  1. 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

  2. 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

  3. 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(打ち切り補償を支払ったときを含む。)。

  4. 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。

  5. 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。

  6. 懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。

  7. 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。

また、懲戒事由としては次の記載がります。

  1. 重要な経歴を詐称して雇用されたとき。

  2. 正当な理由なく無断欠勤が( )日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。

  3. 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、 回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

  4. 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。

  5. 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。

  6. 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。

  7. 素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。

  8. 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。

  9. ハラスメント行為を行い、その情状が悪質と認められるとき。

  10. 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。

  11. 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。

  12. 私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき。

  13. 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき。

どれも重要な規定ですので、自社で発生する可能性がある項番は必ず記載しておきましょう。

外国籍の方を雇う際は、その従業員の原因により在留期間の更新が出来なかった場合や、在留資格に瑕疵があった場合には、一定の処分もしくは労働契約を結ばないとする規則を入れておくと良いと思います。

第70条(副業・兼業)

ここには副業の可否や申請手順などを記載しますが、就労制限のある外国人が副業をしたことにより在留資格の問題に発展することがないよう、副業を制限する規則を入れておくと良いと思います。


このくらい追加(修正)しておけば、何か問題が発生したとしても、いずれかの規則で対応できるのではないかと思いますが、常に何かが起こり、新しい問題も次々に出てきた場合には就業規則を更に更新して、新しい問題にも対処できるような規則にしておくべきだと私は考えます。


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