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#33 防水層の劣化、目視検査後は数値化と物理的検査

防水層の劣化は#31、#32で目視検査が重要であり、劣化症状を具体的に覚えてもらいました。

防水層の劣化の評価は1次、2次、3次診断があります。

1次診断とは

1次診断は目視による劣化症状の確認です。
住民からの通報で劣化がわかることはよくあります。
法定検査や目視外観検査で確認されることも多くあります。
これは診断ではなく点検になりますが、1次診断とも言えなくもありません。
このように防水層は漏水が発生する前に点検で確認されるべきです。
1次診断を行うとは老朽化の確認や漏水が発生した時に専門業者が劣化の状況を確認する際に使用される名称です。

2次診断とは

2次診断は劣化症状の発生個所、面積を数値化します。
これにより劣化の範囲と規模を特定します。
劣化が広範囲に広がっていれば、全面改修が必要になり、部分的に発生していれば部分改修になります。
防水層の劣化は環境によって大きく変わるため、同じ層でも方位に違いがあることが一般的です。

3次診断とは

3次診断は、劣化の進行度を物理的に測定します。
2次診断で確認された劣化箇所の密着度や劣化の進行具合を数値化します。
これによって修繕の必要性、修繕の範囲が特定され具体的な修繕工法が提案されます。

この大きな流れを覚えてください。

3次診断の具体的方法

3次診断は防水層のタイプによって違いますが、試験のために必要な知識は次の様になります。

膜厚測定

主に塗膜防水で防水層の厚みを測定します。
測定機器は電気信号で測定する方法と針を刺し厚みを測定する方法があります。
非破壊試験としては前者が用いられます。
針入れ試験は下地まで針を刺すため、塗膜に傷をつけます。(非常に小さな穴です)
測定した厚みが規格を満たさない場合、漏水等の原因になります。
一般的にこの測定は塗膜防水施行後に行い、劣化検査では用いられませんが覚えておくと良いでしょう。

密着検査

シート防水、塗膜防水の劣化度合いを測る目安として用いられます。
試験方法は代表的な方法が3つあります。
塗膜防水は一般的に下塗り、中塗り、上塗りの3層で構成されますが、下塗り部分(プライマーと言います)が下地との密着度を物理的に測定します。
1、クロスカット試験
2、ピール(ピーリング)試験
3、建研式引張試験
いずれの試験も破壊試験です。

1、クロスカット試験
主に塗膜防水で利用される破壊試験です。
測定面にカッターで1mmから5mmの間隔に縦横に切り込みを入れて、25、100個の碁盤目を作ります。
目の部分にセロハンテープを強く圧着させた後、テープの端を約45度から約60度の角度で一気に剥がして、碁盤目の状態を標準図などと比較して評価するという方法です。
剥がれた格子の目の個数によって判定をします。

2、ピール(ピーリング)試験
主に塗膜防水で利用される破壊試験です。
引き剥がし試験とも言われます。

3、建研式引張試験
シート防水などでも使用される破壊試験
です。

2と3については試験面積を密着させ剥がれるまでに必要な力を数値化して密着度を測定します。
原理等の知識までは必要ありませんが、クロスカット試験との違いと名前は憶えておきましょう。

建研式引張試験

シーリング材の劣化試験

シーリング材の劣化度合いを確認する試験方法は2つあります。
1、引張試験(破壊試験)
試験片を現場から持ち帰り、引張試験を行い硬化の進み具合を測定します。

2、硬度試験(非破壊試験)
デュロメーター(市販されています。価格は3,000円程度です)を用いてシーリングの硬化の進み具合を測定します
シーリング材は一定の柔軟性がありますが、劣化が進むと柔軟性が失われます。

アスファルト防水の劣化試験

アスファルト防水は試験片を引張試験を行うこともありますが、現場で行う試験としては針入度試験があります。
(膜厚測定の針入れ試験とは違うので注意してください)
針入度試験
針入度とはアスファルトの劣化度を測定する試験です。
規定重量の針を試料中に垂直に貫入させ、その深さにより試料の硬さを表します。
劣化が進むとアスファルトは硬化します。
そのため針入度は小さくなります。

*アスファルト防水層の劣化が進むと、採取したサンプルの引張強度や伸びは小さくなるとともに針入度は大きくなる。(過去問平成26年問37選択肢)
➡ ✖

以上が防水層の物理的な劣化試験になります。

次回は鉄部の防水と劣化についてです。

トップ画像はオールグッド株式会社より出典しました。



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