007-昇降機と利用機会についての規約の定め
問題
解答
「可能である」
解答が分かれましたが規約については次の解説も併せて読んでください。
解説
昇降機は上階の方が主に使用します。
1Fに住む人にとっては利用回数が違うことを不満に思う方もいます。
今回の問題は、このような場合に、管理費の利用回数を考慮した差を付けることが出来るかと言うことです。
昇降機の持分
昇降機は共有の設備であり、民法上、区分所有者全員が均等に所有しています。
その意味では維持管理に使用する管理費に差を付けることに違和感があるかたも多いと思います。
修繕積立金は出来ない
先程も示しましたが共有設備(みんなが均等の権利がある設備)である昇降機はマンションの財産です。
そのため、昇降機の更新・交換は修繕費から支出されます。
財産の維持は組合員の義務になります。
そのため、昇降機の利用回数による修繕積立金に差を付けることはできません。
管理費負担の差の根拠
昇降機は法定検査の対象ですが、それ以外にほとんどの組合では数カ月に1度のメンテナンス契約を締結しています。
これらの費用は、日々の運営の観点から管理費で負担します。
昇降機の運用で他に掛かる必要は電気代になります。
と考えると昇降機の管理費負担は次の2つです。
1、検査・メンテナンス費用
2、運航電気代
これらの費用は年間の収支計画に計上されています。
今回の問題である管理費に差をつける提案は、電気代の負担の違いによる管理費の負担が根拠と考えます。
法的に許されるか?
昇降機が共有所有ですが、民法には次の定めがあります。
一方、区分所有法では次のように定めています。
規約に定めれば持分に由らない設定ができると示されてます。
当然、民法と区分所有法では区分所有法が優先します。
と言う訳で、規約に定めれば管理費に差を付けることは出来るとわかります。
公序良俗に違反はどうか。
これについては、社会通念上、妥当と思われる金額でかつ、組合員の合意があれば問題はないでしょう。
妥当な金額については、総会で認められる金額と言うことになります。
実際問題として
このような昇降機の利用回数を理由に管理費に差をつけるケースは超高層マンションに定められているケースを知っていますが、このケースも分譲時にすでに規約に設定されていました。
また、15階以下のマンションでは見たことはありません。
また、提案したとしても賛成は下階住民に限定されるケースが多く、否決されるのではないでしょうか。
ただし、管理規約は法律に違反しない、公序良俗に違反しないことを前提に住民の合意があれば改定することができると言うことを理解してもらうために作成した質問です。
ポイント
1、規約は指針であり、法律ではありません。
2、法律に違反しない、公序良俗に違反しないことを前提に住民の合意があれば改定することができる。
類似の問題としてマンションを第三者に貸出す区分所有者に対して「運営協力金等」の名目で管理費に加算することは判例でも認められています。
ただし、この際の加算額については、社会通念上、妥当と思われる金額が争点になる裁判もあり、あまり高額な金額を設定すると認められないケースもあります。
規約は住民間のルールの取決めです。
民法、区分所有法を理解した上で、できること、できないことをしっかりと覚える必要があります。
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