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033-災害により大規模滅失が生じたマンションの復旧を理解する

問題

033‐災害等で単棟マンションが被災により大規模滅失が生じた時、復旧決議後に行われる買取業者の選定議決の議決要件は次のどれか。
*議決は区分所有の数と議決権
1、復旧議決賛成者の1/2の賛成
2、復旧決議賛成者の3/4の賛成
3、復旧議決賛成者の4/5の賛成
4、復旧議決賛成者の全員の賛成

解答

解説

これまでに区分所有法61条について説明しました。

今回が最後になります。
まずは、今回の設問の答えですが、031、032をマスターした人には簡単な問題です。

復旧会議後、2週間以内に買取業者を指名しますが、この時は、賛成者全員の同意が必要になります。

注意する点は、復旧議決が区分所有者の3/4の議決権、買取業者は選定は、会議に賛成した人の全員の同意です。
混乱しないように覚えてください。

と言う訳で答えは「4」です。

前回のおさらい

それでは、前回からの続きです。
前回は、復旧議決に反対した人に与えられた買取請求権がいつまでも行使できるわけではなく、買取業者が4カ月以上の期限を決めて催告することができるところまで説明しました。

ほとんどの反対者はこの時点までに物件を売り渡して退去をします。
この期限を過ぎると、復旧への参加、自主売却、あるいは値引き等をされて買取業者に買ってもらうことになります。
わざわざ、損をする必要はありませんから、時価で買ってくれる時に代金を受け取って次の生活へ準備を進めることになります。

反対者退去後の流れ

区分所有法では買取をするところまでを定めています。
その後は、全員が復旧工事に賛成した人と買取業者が所有者になります。
理事会と買取業者が中心になり復旧工事の費用を見積り、施工会社を選定します。
修繕積立金だけでは不足するため、必要費用を所有者の持分で負担します。
この費用については、裁判所に猶予を求めることは出来ず、各所有者は個人的に融資を受けることで工面をします。

その後は、修繕積立金の支出、復旧工事の業者との契約などを総会で承認。
工事を開始する流れになります。
大規模修繕工事の進め方と同じです。

いつまで滅失状態を許すか

マンションが滅失してから6か月を過ぎても復旧議決、建替え議決(団地一括建替え議決)が行われないマンションでは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができます。

住民は2者選択を迫られることになります。
復旧もされないマンションは、不動産価値も低下します。
組合に見切りをつけて逃げ出す人もいます。
この時も他の区分所有者に買取請求ができます。
受けた側は、拒否権はありませんが他の区分所有者に買取請求ができるため、早く逃げた者が勝ちのような状態になります。

元々、買取請求を認めている理由は、マンションから退去する人の生活基盤の安定のための制度です。

次の生活への足掛かりになる資金力がある方は良いですが、住宅ローンも残っていたりすると簡単に退去を決めることが出来ない人もいます。
結果として、その人たちがそのまま住み続けることになります。

しかし、このような状態になるとデベロッパーにとっては美味しい物件になります。新しいマンションを建てる土地を安価に入手できます。
建替えなどの合意形成もし易いと言えます。
これが区分所有法62条の建替え議決に繋がります。

買取請求を受けた区分所有者、買取業者への配慮

復旧議決に賛成した人は、反対者からの買取請求に拒否権がない以上、経済的な負担はかなり大きなものになります。

そこで、買取請求を受けた区分所有者、買取業者には、支払を相当の期間許容することを裁判所に申出ることが出来ます。
(区分所有法61条、15項)
買取業者が買取できれば、賛成者の負担はありませんが、買取業者が見つからない時には支払いの猶予はありがたい制度になります。

注意する点は、買取請求への支払いの猶予であって、復旧工事費等については裁判所が猶予を与える条文の定めはありません。


(建物の一部が滅失した場合の復旧等)

第六十一条 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。

 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。

 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

 第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。

 第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

 第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。

 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

10 買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となつたものを除く。以下この項及び第十五項において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。

11 第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者。次項において同じ。)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。

12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

13 第十一項に規定する催告を受けた区分所有者は、同項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。

14 第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

15 第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第十項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。

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