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003-改正マンション建替え円滑化法について(1)

質問は2問出しました。

問1 改正マンション建替円滑化法では耐震不足、火災への安全性の不足、外壁等の剥落による周辺への危害のおそれがあるマンションは対象となるが配管の老朽化、バリアフリー不足のマンションは対象とならない。これは正しいか?多くの受験生が苦手な分野ですよね。

正解は「正しくない」

問2 改正マンション建替円滑化法では耐震不足、火災への安全性の不足、外壁等の剥落による周辺への危害のおそれがあるマンションは敷地売却の対象となるが配管の老朽化、バリアフリー不足のマンションは対象とならない。これは正しいか?(類似問題)

正解は「正しい」

では解説します。

以前までの建替円滑化法

1981年6月以前に建築確認を受けたマンションの多くは旧耐震と言われ、現行の耐震化基準時に満たない構造と言われています。
国土交通省は、耐震不足のマンションの耐震改修を促すために施行された法律が「建替円滑化法」です。
そのため、対象は「耐震基準に満たないマンション」でした。
実際、この法律が施行されてから耐震改修を円滑に行うことができるようになったと言われています。

適用される優遇措置は2つ

耐震基準に満たないマンション」に対する建替円滑化法の優遇措置は2つです。

1、建替時、耐震化修繕時の容積率の緩和です。

耐震化修繕ではブレース構造(外壁、ベランダの補強の柱を入れる)が用いられますが、これは躯体の容積率に違反するため工事申請が出来ない欠点がありました。
そこで、建替円滑化法で容積率の緩和を認めることにしました。

また、建替え時には、容積率の基準を守ると新耐震構造にするために元々の専有面積が狭くなる、あるいは同等の建物を建てることができない問題がありましたが、建替円滑化法で容積率の緩和を認めることにしました。

2、敷地売却の民法の壁

建替えや耐震改修が様々な理由で出来ないマンションでは、マンションを放棄し敷地を売却することで区分所有者に資産を振分けことが解決策のひとつです。
しかし、共有物である敷地の売却は、民法の規定によりすべての住民の合意が必要です。
残念ながら全員の賛同が得られるマンションは少なく、敷地売却はできないと言われていました。
そこで建替円滑化法により、全員の合意から合意要件を4/5に引き下げるとしました。
もちろん、簡単な数値ではありませんが、全員合意に比較すれば合意の可能性が高くなります。
実際、建替円滑化法が施行後、敷地売却は数件行われた実績があります。

耐震不足だけではない

マンション管理組合の耐震化に対する意識は、大きな震災がある度に変わり耐震改修は進められていますが、近年は、耐震化だけではなくマンション躯体の老朽化が問題となり特に適切な修繕の不履行による老朽化の進行が懸念されています。

そこで、国土交通省は、これまで対象が耐震化不足のマンションと限定していた建替え適正化法の対象を大幅に増やすことにしました。
これが改正建替え適正化法です。

国土交通省の資料です。

国土交通省HPより出典

赤字で示された内容が新設された対象と優遇措置になります。
ここからは覚えることに中心に説明します。

認定対象は4つ追加された

1、火災に対する安全性の不足

耐火基準、防火基準も年々改定されていますが、既存不適合マンションでは、修繕に多大な費用が必要になり、建替えを選択することもひとつの考えであると言われています。
そのため、建替え、敷地売却を促進し、円滑な合意形成ができるように建替え後の容積率の緩和と合意形成の要件の緩和ができる建替円滑化法の対象に追加されました。

2、外壁等の剥落による周辺への危害

適正な修繕の不履行はマンションの廃墟化につながります。
外壁修繕を実施しないマンションでは内部の鉄筋の腐食が進み、外壁と躯体の剥落が起きる危険性が高く、周辺へ危害を与えることになります。
そのため、建替え、敷地売却を促進し、円滑な合意形成ができるように建替え後の容積率の緩和と合意形成の要件の緩和ができる建替円滑化法の対象に追加されました。

以上の2つが建替え時の容積率の緩和優遇と敷地売却時の合意形成の要件の緩和の対象になりました。

3、給排水管の腐食による衛生

躯体の修繕は履行していたマンションでも、給排水管のメンテナンスを怠っているマンションは多く、築30年以上が経過すると専有部単位で漏水事故が発生するケースが多く報告されています。

給排水管の配管は、以前はスラブ下配管と言われ、枝管も含めて共用部分扱いでした。
一度、漏水が起きるとコンクリートの床下の配管を交換する工事が必要になり、修繕費が多額になります。
場合によっては建替えと近い額が必要になるマンションもあり、国土交通省は建替えもひとつの選択肢と考えられるように建替円滑化法の対象に追加されました。

しかし、敷地の売却までは認めず、あくまでも建替え時に容積率の緩和ができるとしました。

4、バリアフリー基準への不適合

マンションのバリアフリー基準は自治体単位で決められています。
バリアフリー基準は国の法律では、現在も努力目標です。
この背景には区分所有者の高齢化、単身世帯の増加があります。
設置義務がない昇降機、手すりがなく段差が多い共用部分は高齢者や障害者にとっては外出の障害になります。

高齢者が多いマンションは築年数も経過していることが多く、躯体の老朽化も進んでいます。国土交通省の強い意志

今回の改正建替円滑化法では、国土交通省のマンション施策の方針がはっきりと示された言われています。
そこで、国土交通省は建替えもひとつの選択肢と考えられるように建替円滑化法の対象に追加されました。

しかし、給排水管の老朽化と同様に敷地の売却までは認めず、あくまでも建替え時に容積率の緩和ができるとしました。

国土交通省のマンション施策の本気度

1、老朽化が進むことは仕方がないが適正な組合運営と修繕計画の履行により老朽化の速度を遅くすることでマンションの廃墟は絶対に避ける。

2、マンション管理組合は老朽化が進んだ時、選択肢として「建替えによる再生」あるいは「敷地売却による再生」の2つがあり、それ以外は行政として認めないと言う意志。

3、国土交通省は、マンションの廃墟はその地域の負の遺産になり廃墟後に住民が逃げ出し、放置することを決して認めず、そうなる前にマンション管理組合の運営を監督する意志を公表した。

その第一弾が、改正建替円滑化法です。
その後、改正マンション管理適正化法が施行され、マンション管理の適正化計画制度の導入が昨年始まりました。

この制度の牽引者にマンション管理士を改正マンション管理適正化法内で定めています。
これだけ力を入れている政策の中心とされたマンション管理士の資格試験に出ないと考える方がおかしいでしょうね。

おそらく、来年、再来年の適正化法に関する出題(後半の5問)は、管理業務主任者、マンション管理士試験共に大幅にレベルアップされると私は考えています。

団地の敷地売却については次回説明します。





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