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032-災害により滅失が生じたマンションの復旧を理解する

問題

032‐災害等で単棟マンションが被災により小規模滅失の損害が生じ復旧議決が認められた時、区分所有者が復旧費用について裁判所に支払いの猶予を請求することはできるか。
1、できる
2、できない
3、わからない

解答

2

解説

前回までに復旧議決に至るまでのことのポイントを説明しました。

今回は復旧議決が可決された後の復旧までの流れについて説明します。

否決(復旧に反対)者の買取請求

61条では、復旧議決に反対した組合員に1つの権利を与えています。
それが賛成者への買取請求です。
反対者は復旧工事をせずに専有部分からの退去を決めた人たちです。
賛成者にとっては邪魔者、反対者にとっては少しでも早く次の生活に移りたいと考えているはずです。

そこで区分所有法では、反対者は賛成者に自分の権利を買取ることを請求します。(区分所有法61条7項)

この時、賛成者の誰でも良い(一人ではなく複数人、全員でも可)のですが、大抵は裕福そうな人に買取ってもらいたいと思いますよね。
買取請求をされた組合員は、断ることはできません。
しかし、それでは複数人から買取請求をされた場合、その人があまりにも気の毒です。
そこで、買取請求を受けた組合員は請求を受けてから2か月以内に、他の人も負担してくださいと今度はほかの組合員に買取請求を起こすことができます。(区分所有法61条7項)

何か、むちくちゃ解決方法ですが、最終的には復旧議決に賛成した区分所有者が全員で持ち分比率に応じて買取請求額を負担することになります。
*この時の持分の計算は、反対者の持分を除いて再計算します。

復旧費用だけでも負担

しかし、マンションの復旧費用だけでも大変なのに反対者の専有部分の買取費用まで負担することはとても大変です。

そこで、復旧議決には、賛成者の支払いを肩代わりしてくれる業者を指名することが出来ると定めています。
(区分所有法61条7項)

ただし、その期間はその期限は復旧議決から2週間以内と短く、実際には復旧議決後に探すことは不可能で、復旧議決前には買取業者を決めておく必要があります。
言い換えると、買取業者が決まった時に復旧議決ができると言うことです。

また、買取業者の指定には復旧議決賛成者全員の合意が必要になります。

時間的に考えると次のようになります。

結果的に復旧議決に賛成した人の負担はなく、買取請求は買取指定者がすべて受けることになります。

買取指定者の通知について次のように定めています。
1、書面による通知で相手が受取った時点から有効
2、相手が了承すれば電磁的方法(メール等)でも有効
(区分所有法61条8項9項)


ところで壊れたマンションの部屋を買取るメリットは何でしょうか。
復旧工事の費用は復旧議決に賛成した区分所有者が負担します。
買取業者も買取った持分について負担しますが、専有部分は安価に買取ることが出来、リノベーション等を行うと高値で売ることが出来ます。
利便性の良い土地だったり、人気のある地域だったり、買取業者もあれこれ分析した上で判断します。


賛成者と買取指定業者は連帯債務者

連帯債務者は民法で勉強してますよね。

複数の人が共同でお金を借りた時、その返済の義務を、共同で借りた複数の人全員が持ちます。 これを「連帯債務者」といい、債権者はこの連帯債務者の中の1人、または数人、または全員に対して返済を請求することができます。

復旧議決賛成者が指定した買取指定業者ですが、万が一、買取請求に応じられない時は連帯債務になります。
買取請求者からすると、誰でもいいから金を支払ってくれということになります。
ただし、買取指定者に資産があることが明らかな場合は、それを証明すれば復旧議決賛成者の債務は免除されます。
(区分所有法61条10項)

このような事態にならないように買取業者の選定は重要になります。

いつまでも買取請求ができるわけではない

復旧議決に参加しなかった者や反対した者も復旧工事の進み方は気になりますが、それ以外にも移転先が思ったように決まらないケースもあります。

復旧工事を進める側にとっては、態度をはっきりさせない者の存在は厄介です。
そこで、61条では、買取業者は、4カ月以上の期間を定めて催告を行うことが出来、その期限を過ぎると買取請求ができなくなります。
この期間の始点は、相手に届いた時から4カ月以上の期間を定める必要があります。
これにより、復旧議決に反対、態度を明らかにしない組合員をマンションから排除することができます。
通知については手紙でも電磁的方法でも可能ですが、電磁的方法を用いる場合は受け取る人の承認が必要になります。

復旧議決とはそれ程厳しい議決なのです。

第八節 復旧及び建替え
(建物の一部が滅失した場合の復旧等)

第六十一条(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

 第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。

 第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

 第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。

 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

10 買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となつたものを除く。以下この項及び第十五項において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。

11 第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者。次項において同じ。)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。

12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

13 第十一項に規定する催告を受けた区分所有者は、同項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。

14 第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

15 第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第十項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。

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