登-12 先取特権を理解しよう
先取特権が理解できない人が多いことは知っています。
自分も試験勉強で「?」と何度も勉強しました。
先取特権は民法303条で次のように定めています。
「先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」
???ですよね。
では順番に説明します。
先取特権の種類を理解しよう
先取特権には4つの種類があります。
1、共益の費用(多数の債権者の保護)
2、.雇用関係(倒産時の従業員の給与を保護)
3、葬式の費用(葬儀社や寺の保護)
4、日用品の供給(売掛金の保護)
この番号がそのまま優先順位となります。
先取特権は特定の地位の人を保護するための法律であることがわかります。
区分所有者の地位とは
区分所有物件は所有者が全員で共用部分を維持、管理するために管理費等を徴収する共益費に該当します。
区分所有法に定めている先取特権は、第307条【共益費用の先取特権】が該当し、他の先取特権よりも優先順位が高い権利です。
① 共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
② 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
弁済を受けられる資産を理解しよう
次に先取特権には種類ごとに、先に債権者が優先弁済を受ける対象を定めています。
1、一般の先取特権(全財産から弁済を受ける)
2、動産の先取特権(動産に限定して弁済を受ける)
3、不動産の先取特権(不動産に限定して弁済を受ける)
区分所有法に定めている先取特権は、一般の先取特権に該当します。
結果として民法ではマンション管理組合の管理費等の滞納へ先取特権はもっとも優先順位が高く、さらに債務者の全財産から弁済を受けることができる権利と言うことです。
これを覚えてしまえば、問題は簡単です。
1 管理者に対して支払うべき報酬が定められ、管理者が、管理組合に対して報酬請求権を有する場合には、管理者の報酬請求権は、先取特権によって担保される。(平成28年マン管)
*共益の先取特権です。➡ ✖
2 区分所有法第7条の先取特権は、共益費用の先取特権とみなされ、他の一般の先取特権と競合する場合にはそれらに劣後する。(平成28年マン管)
*最強の先取特権です。➡ ✖
3 店舗を経営する区分所有者が、管理組合の承諾を得て、共用部分である廊下に自らの所有する動産であるショーケースを備え付けていた場合、このショーケースに対しては、先取特権の効力は及ばない。(平成28年マン管)
*全財産が弁済の対象です。➡✖
4 区分所有者が、規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について先取特権を行使するに際しては、当該他の区分所有者が第三者から借り受けていた家具についても即時取得の規定の準用がある。
(平成28年マン管)
*この問題は有名な問題で、先取特権が占有権にもおよぶ例です。
借り物は占有状態にあり、それも財産の一部と見なされます。➡ 〇
逆に債務者の物であっても譲渡をしてしまうと所有権が失われ弁済(差押え)の対象ではなくなります。
先取特権も勝てない抵当権
これだけ強い先取特権ですが、抵当権には勝てません。
不動産に関する権利の保存費用を負担した人がいる場合に、その人がその旨を登記すれば、先取特権が発生し、不動産を競売して保存費用を取り戻せるという権利である。(抵当権)
これがあるため、最強の先取特権も抵当権には劣後するわけです。
先取特権の登記は可能か?
可能です。
ただし、これは売掛金の保護に関することで具体的には「不動産保存の先取特権」で民法第326条に定められた権利です。
倒産しそうな会社に売掛金がある場合に保護する定めで、債権は不動産に限定されます。
このような場合に先取特権を登記します。
マンション管理組合の共益費は滞納する時点まで債務は発生しません。
登記をすることはできますが、優先度から言って登記の順位に関わらず抵当権以外には最優先で弁済される権利です。
わざわざ、登記費用を支払っても意味がありません。
以上が、先取特権の説明です。
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