消えたと思っていたもの


私には、仄暗い過去がある

誰にも言いたくなくて、ただ閉じ込めて、触れないで、忘れ去った遺物として缶に詰め込んで地中深くに埋めた。

それが今、あることをきっかけに何気なく見つけ、缶の錆を目視し、雪崩のように頭に押し寄せた。

私にとって大切な人と、魂から向き合いたいと願った時だった。


私は明るい。
誰がどう見ても「イェーイ✌️😆」みたいなタイプである。
周りから明るくて快活だね!としか言われない。


仄暗い過去は、それを隠すための手段だったのだと思い出した。
本当の性格はウジウジネチネチしているし、理屈っぽくてめんどくさい。ニタニタと笑って誤魔化すような性格…なのに、どうして周りとの乖離があるのだろうとずっと思ってきたのだ。

単純な話である。全て隠すためだ。
隠して、忘れて、違う自分で居たかったのだ。

私はそんな人間じゃない。
臥して、泣いて、こんな惨めな思いをするなら来世に早く行ってしまいたいと願う自分から逃れるためだ。


つらかった。
嫌だった。
全て嘘なんだと叫びたかった。


改めて、10年以上閉じ込めた、あの日から真空パックを開けたようにそのままの生々しさで貴方の目を見て蘇ってきた。

何故貴方を巻き込んだのだろう。
私は貴方を苦しめるために生まれてきたのだろうか。

ここ数年は理由もわからずそれだけが苦しくて、自分なんて居なくなればいいのにとずっと願ってきた。

何故貴方が苦しいの。
私は貴方と出会った当時、まだわかっていなかった、思い出せずにいた。
ほら見て!私こんなに笑顔だよ。貴方を苦しめる存在じゃないよ。
必死におどけた。
賢い貴方は更に苦しんでいた。

何故?私はどうしたらいいの?
出会ったのは間違いだったの?

なのに貴方と離れるのはそれよりもつらかった。
貴方無しの人生などあの時よりもつらい。


私は貴方に救って欲しかったのだ。


か弱く呟く貴方を励ましているつもりでいて、私が誰よりも救われたいと縋っていたのだ。
「貴方なら私を救ってくれるだろう」と、亡霊のように押し込めた過去の私が貴方に手を差し伸べていたのだ。

ごめんなさい。誰かに一緒に泣いて欲しかったわけじゃない。私は私を見つけて欲しかったんだ。なのにこんなにも傷つけて、私は気づきもしないでおどけて、馬鹿みたいだね。


フラッシュバックのようにチカチカと記憶が蘇り、毎日吐き気に耐えている。1人でいると胃がヒクつき、呪文のように大丈夫大丈夫と自分を落ち着かせる。

苦しくて、人前でも大声で泣いてしまいそうになるのを必死で堪えている。

ようやく向き合えた。やっと、正体がわかったのだ。

全て思い出した今、私は生まれ変わりたいと思っている。
新たに人生を始められるのなら、とクラクラする頭で必死に何かを願っている。

貴方の助けが必要だ。
弱った貴方に言いたくないけれど、頼むからこれだけは聞いてほしい。

救ってください。
あの頃の膝を抱えて泣く私と、今の愚かな私を。



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