老木の願い
アトリエの敷地に、大きな梅の木を残したまま作られた擁壁があります。
梅の木は全体に苔が生えていて、幹を叩くと中が空洞になっているような軽い音がします。※苔が生えるのは木に元気がないためです
瀕死の状態に見えますが、辛うじて生きている幹の部分から水分を送り、葉と実をつけています。状態の割にお元気そう。
ただ。
擁壁が作られる前からそこで暮らしていた梅の木。擁壁が作られたあとも生長を続け大きくなったようで、擁壁にヒビが入っています。擁壁の状態としてはよくありません。崩壊の可能性もあります。
ネットで調べると擁壁のある物件は要注意とか出てきます。気になりだしたら止まらない私たち夫婦はどこまでも落ち込み、この場所を手に入れた事自体を後悔し始めました。ため息ばかりでした。
・・
ある日、梅の木に「なんかごめんね。いろいろあなたのせいにしちゃって」と声をかけ木の幹に触れました。すると幹についていた苔がポロポロと簡単にはがれたので掃除を始めました。
あなたはこのまま枯れちゃうの?
私はあなたが枯れてしまうととても困ってしまうのだけど…
どうかどうかもうしばらく元気でいてね
こう話しかけてからしばらくして、掃除の時に見たはずの幹の凹みに一粒の青梅がちょこんと置いてあるのを見つけました。
こんなところに、気づかなかったなーとその青梅を手に取りハッとしました。
そうだ、子孫を残したいんだ!
だから今でも頑張って実をつけ葉を茂らせてるんだ。
わかった、頑張って増やしてみるね
でも子どもたちをなんとか育てられたとして、そうなったらあなたはホッとして天国へ行ってしまうのではない?そしたら…
すると梅の木はこう答えました。
柱になる
すごい…
心が震えた私は早速種まき用に青い梅の実を収穫、挿し木も試してみようと少し枝ももらいました。何度でも試していいとのことなので、頑張ってみます。
続く
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