マガジンのカバー画像

BluebeeTC | 短編小説集|雑多版

52
ランダムにその日思いついた文章を投稿しています。 僕自身は書きながら深刻になりすぎたりしますが、読者さんには、サーと読み流していただいて、面白いと言っていただける方がいれば、良か…
運営しているクリエイター

#イラスト

Hermit Crab (ヤドカリ)

「中身はアザラシなんですよって」とヤドさんは言った。 「なるほど、ということは、ヤドさんのいつもの絵文字の中の白い生き物は甲殻類じゃないんですね。」と僕は言った。 「はい、違いますよって」 ヤドさんの声はとても立っている。一つ一つの言葉が聞きやすく、聞いているととても落ち着くのだ。 それでも、向かい合わせで、ヤドさんと座っていると、少しむず痒い感じがする。 「ヤドさんはお仕事何しているんでしたっけ?」と僕は聞いた。 「えーとね、まぁマッサージのお仕事ですね。」

Drums

昨日の投稿を思ったよりたくさんの人が読んでくれたのでうれしくてまた今日も書きます。仕事終わりに友達と話しながら、思いついたフィクションです。 楽器のドラムについて、お話することもある友達について想像しながら書いた短編小説です。 良ければ一読ください。 _____ 僕らには、共通の話題がたくさんある。 僕とこうちゃんは、友達としての歴は短いけれど、それぞれの会話を楽しむだけの共通認識がある。 共通認識ってのは、つまり、こうちゃんとだから「できた」ことであって、他人と簡

Friendship.

久しぶりの投稿です。休日に友達と話しながら、思いついたフィクションです。 何気ない会話から想像した短編小説です。 良ければ一読ください。 _____ 「ここにはあなたの居場所がありますよ」と、僕は言った。 彼女には、彼女のペースと、心休まる場所があるということが言いたかった。 僕が言いたかったのは、つまりそういうことで、彼女とは「僕たち」の距離感と、「友達」ということについて、話をしていた。 「私たちって、いいお友達よね。」と、彼女は言った。 彼女は僕よりいくら

A Cup of Coffee

今回の短編は、家でコーヒーを飲みながら思いついたフィクションです。 良ければ一読ください。 _____ 「僕たちは偏見と暴力に満ちた世界に生きている。様々な立場の人間がおのおの利害意識を持って、その偏見と暴力を行使し、擁護し、それらを持って人々を煽動する。  例えばワンカップ・コーヒー問題についてはどうだろうか。」とその人は言った。 「つまり、ワンカップ・コーヒー問題なんですね。あの戦いで日本の軍部が犯した人権侵害として取り上げられ、この人権侵害について日本政府は何を

優し。

今回の短編は、4~5歳のころの経験に基づいたフィクションです。 良ければ一読ください。 _____  子供のころ、絵がとても好きだった。描くのも好きだったし、絵本を見るのも好きだった。  通っていた保育園のウサギの絵を描いたり、人間の絵をよく描いて先生によく褒めてもらった記憶がある。  「人参を食す自画像」僕は何枚かそのような絵を描いた。きちんと白目を残した大きなネコ目の自分と、顔のそばに色とりどりに塗られた人参。  先生が特に褒めてくれたのは、黒く塗り潰した大きな点では