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今回の短編は、18歳の頃のボランティア経験に基づいたフィクションです。 良ければ一読ください。 _____ 僕は老人ホームに何度か行ったことがある。例えば9歳の時、初めて広島に住んでいた祖父の老人ホームに行った。 母の故郷にあるその施設はその田舎町の風景で人目を引く外観をしており、無機質な白い壁のその建物は、緑の多い平和な町に何か不吉な風習を広める基地のように見えた。 今思えば、それは病院を連想する白塗りの建物への違和感と恐怖によるものだったのだろう。 端からお別れ
今回の短編は、思い付きのフィクションです。 良ければ一読ください。 _____ 「ノダ君によく似ているね...」と、急に言われた。京都駅前のスクランブル交差点(の北西端へたどり着いたあたり)。そう言って、その人は僕の手首を強めに(静電気すら起こった)握った。 「ちょっと顔を見せて」と女の人の声が立て続けにした。手首をわし掴みにされていたので、僕はできるだけ訝し気に、その声がする方に向かって上体をひねって振り返って(さながら、財布をすられたのに気が付いた刑事のように)女性
今回の短編は、完全に思い付きのフィクションです。 かなり、奇妙なのでサッと読んでいただければ... 良ければ一読ください。 _____ 向日島。たまに乗る鉄道のローカル線に見慣れない町名の駅があったので、思わずそのその駅で電車を降りてしまった。降りてから、何とも言えない心細さを感じた(あまり信用のおけない知人の実家の玄関を呼ばれもしないのに蹴破った時のような心細さ)。 「しまったな...」と僕は言った。それからほとんど無人の駅を見渡した。反対の路線の向こうには、堀の
今回の短編は、ほんと短い大学生時代の経験を基に書いた恋バナです。 良ければ一読ください。 _____ 彼女に知ってほしいことがたくさんあった。そのためにずいぶん言葉を考えた。一つ一つのセンテンスが淀みなく流れ、音の響きで彼女をおびえさせないように、そしてなにより言葉に思いをのせ過ぎないように僕は話をした。 彼女と出会ったのは二十歳の年だった。 出会ってから、毎日一緒に時間を過ごすようになるまで二週間と掛からなかった。 彼女との時間を僕は軽やかに過ごしたかった。