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【往復ヲ書簡】#7)ゲバラからだらくいんさんへ
だらくいんさんへ
本音を言えば文頭のジョークとして『推しメンの笑顔(Smileではなくlaugh) 』辺りを晒し上げ、「身の上が変わったからか文にも余裕が出てきましたね」と姑ライクな小言センテンスを差し込みたかったのですが、今回は他に書きたいことが多く、既に4,400字コースのオイニーが漂っているのでスッと始めます。
というわけで前回のご回答ありがとうございました。
個人的にずっと考えていたテーマでもあり大変気づかされることが多く、改めてだらくいんさんにこの話題を振って良かったなと思いました。
中でも①のキャパ事情については全くの同意です。
もっと言えば、ネットの発展による「有名人/一般人」の垣根を超えた爆発的なコンテンツ増に伴い、相対的にヲタクが趣味に投じられる可処分時間が減ったように思います。
そうした前提を考えると、接触による認知など関係性の要素が絡む分、ヲタクが限りあるリソースを一点集中的に投じる傾向にあるのも自然なことでしょう。
そして仰る通りこの部分は個人の意識で一気にどうこうできる話でもないので、界隈や社会単位での変化が求められる印象です。
次に②の接点に関する話ですが、個人的にこれが最も強く印象に残りました。
たしかに現状僕らは当然のように日々ドル関連の情報を追っていますが、そうではない現時点でアイドルカルチャー自体に興味がない人に対して、その足を止められるような「興味のフック」になるコンテンツが、声優界隈と比べてアイドル界隈は弱すぎると感じました。
他人の興味喚起は「1→100」より「0→1」の方が比にならないほど難しいので、このゼロイチ型のアプローチについてはもっと掘り下げて考えるべきだと思います。
そしてその課題意識は③のネット発信に直結します。
特定の番組を持たないアイドルグループはMVやライブ映像ならびに個人のSNSや配信などを通して「とにかくライブに来て欲しい」というメッセージ発信を習慣的に行っている印象ですが、対して声優界隈は「出演アニメを観る」「ラジオを聴く」「ネット番組を観る」といった、あらかじめパッケージングされて所要時間も読みやすいコンテンツが多々あり、情報収集のために「どの媒体で」「どんなコンテンツを」「どのくらい時間をかけて」消費すればよいのかが分かりやすいのだと思います。
こうした「応援するうえで何をどう追えばいいのか」という『推し順路』が整備されていることがネット発信では特に重要だと思いますし、その点で言えば「エピソード0」に当たるデビュー前合宿のドキュメンタリーを見やすい約10分尺でメンバー全員分上げている≠MEのネット戦略は大胆なようで実に理にかなっています。
こうしたゼロイチ型のアプローチを増やしつつ、さらに言及のあった「ゆるヲタ」としての別の推し順路を整備する動きが進めば、個々人のヲタ活の選択肢も広がり、新規流入の敷居も低くなり、より横の文脈でシーンを追うことができるのではないかと思います。
たとえるならこれは登山のようなもので、上級者用の急斜面コースもあれば初級者用のなだらかなコースもあっていいと思うのです。
そうして顧客に応じた複数のコース設定をすることで、一人一人が無理なく自分の登り方を選択できるのでしょう。
といった所で書簡を始める前に所感でヒートアップしてしまい既に1,000字を超えてしまったので、慌ただしいですがこれより頂いたテーマに答えていこうと思います。
テーマは「イベントレポートの書き方」についてですね。
これまた僕が長く考えてきた事柄であり上手く文章に起こせるか分かりませんが、ひとまず現時点で思うところを雑多に書いていければと思います。
まず、いわゆるヲタクのレポブログを「どう書くべきか」は、そのレポを「何の為に書くか」によります。
仮に100%個人の備忘録であれば、のちに自分で読み返して満足できる内容になっていれば何の問題もありません。
ただ少しでも「そのグループの魅力を外に広げたい」といった、上記「ゼロイチ」的な目算がある場合は話は別です。
少なくとも人に読んでもらう文章である以上、人に伝わる言葉を使い、かつ最後まで読み切ってもらえるような書き方をしないと、そもそも何も書いていないのと同じだと思います。
なので、まずは最低限の客観的情報としてグループの簡単な紹介や取り上げるライブの日時や場所を明記し、次に当日の人の入り具合や祝い花など現地の様子を描写することで、読み手に会場の空気感を想像してもらい、このイベントに対する心理的な距離感を縮めたうえでライブ本編の話に入っていくのがスムーズだと思います。
たとえるならこれは漫才でいうツカミのようなもので、なるべく「他人事」のフィルターを外して、以降の文章をより前のめりで読んでもらえるような導入が望ましいです。
もっと言えば、たとえ何万字と書いたところで「生きた人間が実際に行ったこと」という主張が弱いとレポとしての説得力に欠けるので、時には写真や動画といった視覚情報の補足にも頼りつつ、あくまで骨組みとしての客観的情報は序盤にしっかり固めておくべきと思います。
そうした骨組みとしての客観性がしっかりしているからこそ、のちにそこへ肉付けされる主観性、ひいては個人の情緒的な文章がより読み手に届きやすくなります。
そしてこの主観性、もっと言えばある種独りよがりなほど私的な感情こそが、ファン主導の文章における最大の個性であり強みだと思います。
というのも、非営利で書かれたファンの文章に「個人の想い」以外のバイアスがかかる余地はなく、最低限のリテラシーや倫理の範囲内なら何でも自由に書けるというのが最大のアドバンテージでしょう。
ただその分どんなに魅力的な個人の考えや気持ちであっても、他人が読んで分かる言葉や書き方になっていないとせっかくの想いが伝わらないので、そこに適度な客観を入れ込む必要もあります。
かといって逆に「みんなに伝わること」を意識しすぎると、結局誰にも深く響かない、毒にも薬にもならない薄い文章になりかねません。
要はこの主観と客観の綱引きを頭の中で延々と繰り返しながら、自分の中で最適なバランスを探るしかないのだと思います。
ただ個人的に最も好きなのは、「そのグループに向けてしか書けない感想」を「そのヲタクにしか書けない書き方」で暑苦しいまでに書き殴っている情熱的な文章なので、いくら音声メディアやショート尺の映像文化が流行っても、ヲタクの個人ブログのような鈍く、重く、不格好ながらどこか微笑ましいカルチャーはずっと続いていって欲しいなと思います。
というわけで「レポの書き方」というかザックリしたマイ哲学みたいな話になりましたが、この辺りでご納得いただけたら幸いです。
まただらくいんさんのレポ文章へのお考えは、来たる2021年12月21日(火)に渋谷のO-EASTにて行われるクロスノエシス4thワンマンライブ『blank』(※宣伝)のあとに、実際のレポブログという形で提示してもらえたら嬉しいです。
さて、早いもので「今年いっぱい」という話で見切り発車した本企画も、最後の質問をさせていただく段となりました。
最後はだらくいんさん個人のこととして、『AMEBAさんが正式に推しメンになってからの心境の変化』について教えていただきたいです。
この質問を選んだ理由はいくつかあり、ただ単に「最初に目つぶしみたいな質問から始めたから最後はドロップキックで終わろう」といった安直で暴力的な思い付きだけではありません(多分)
というのも、以前だらくいんさんは本企画以外の個人のブログで「『アイドルが推しメンになるとき』という項目で文章を書きたい」と露骨に匂わせた挙句、「でも長くなりそうなのでまたそのうち」と文を結んでおりました。
経験上、ヲタクが自己発信で言う「そのうちやろう」はたとえ元号があと300回変わっても永遠に実行されることはないので、「それなら今ここでやってもらおうか」とガラ空きのアゴに全力アッパーを見舞った形になります。
思えば元々この「推しメンと呼ぶ/呼ばない問題」で華々しくスタートした本企画なので、年の終わりとともに総決算して、また新たな気持ちで翌年以降の次なる動きに繋げていけたらと思います。
ということで、ひとまず僕からだらくいんさんに向けて書く「ヲ書簡」はこれで最後となりました。
改めて僕の突飛な思い付きに付き合って下さったこと、心より感謝いたします。
そして少し早いですが今年は大変お世話になり、ありがとうございました。
来年以降も仲良くしていただけたら嬉しいです。
それではお返事お待ちしております。
本格的に冬も始まり寒い日が続きますが、どうぞお体ご自愛なさってください。
それでは。
「推しへの想いに寄り添います」
良接触プランナー、チェる・ゲバラより。
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